第3期のMath Working Groupが始動した話

アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)

1年半ほど前にWebにおける数式と数式の読み上げを取り巻く環境についてという記事を書いていたのですが、MathML 3を勧告、ISO化を見届けて休止していたMath Working Group(以下、Math WG)が今月初頭に再始動しました。現在のMath WGのホームページは、Team ContactsがCSS Working Group(CSSWG)のメンバーでもあるBert Bos氏ということもあって、CSS WGのホームページとそっくりな作りになっています。

さて、このMath WGは、MathML 3仕様で認識されている問題に対処すべく、Math MLの改訂を始めるために設立されたMathML Refresh Community Group(以下、CG)が前身となっています。Charter(憲章)のScopeによれば、CGが取り組んできた活動をさらに前進させることを目的としています。MathML WGが特に取り組む目標は以下の3つとされています。

  • プレゼンテーショナル要素のコアセットをブラウザーで広く採用することで、数式の表示を外部ライブラリーに依存することなく、どのブラウザーでも同じように表示されることを著者に保証できるようにする。
  • 数式と化学式の両方を対象としたPresentation MathMLのアクセシビリティの向上。数学的な意図を指定する手段を提供するとともに、追加情報がない場合のPresentation MathMLの解釈に関するガイドラインを提供する。
  • 数式の検索性の向上。

そして、MathML WGは3つの仕様の開発を予定しています。1つはMathML Core Level 1です。これは、CGによって現在のWebプラットフォームの機能とほぼ一致させ、現在のCSSおよび基本的なDOMとの統合を含むMathMLのレンダリングを定義し、テストとバグの公開を行うという初期の働きが既に行われていますが(MathML Core Draft Community Group Report)、徹底的にレビュー、テストしていくとのことです。

もう1つはMathML Core Level 2になります。これは、時間や実装上の制約のためにLevel 1から除外された機能を扱うもので、進化するWebプラットフォーム内でMathMLを改善し、Shadow DOM、Custom Elements、CSS Layout APIやその他Houdini APIなどの技術を使用して、一般的にMathMLをポリフィルまたは拡張する際の記述を強化するためのガイダンスを提供するとのことです。また、要素や属性のアクセシビリティマッピングの提案を通じて、リンクやアクセシビリティなどの問題にも対応していくようです。これらMathML Core仕様は、すべての主要なブラウザーエンジンで実装されている、あるいは実装されるだろうMathMLの部分のみを定義することを目的としています。

最後はMathML 4です。これは、既存のMathML 3仕様を見直して、MathML Core Level 1に基づいて再構築することをうたっています。また、これまで使用されず、今後も使用されない見込みの機能を廃止し、削除すると同時に、数学のアクセシビリティと検索性を高めるために、Presentation MathML要素に数学的な意図の指定を可能にする属性が追加されるとのことです。

また、関連するW3C Note等も発行する予定だそうで、MathML Accessibility Techniqueノートや、MathML出力にアクセシビリティや検索性のためのアノテーションを組み込んだTeX-MathML変換ツールあたりが個人的に興味をひきました。

CharterのタイムラインとしてはMathML Core Level 1のCandidate Recommendation(勧告候補)は2022年1月を目標とするとのことです。この予定のとおり進めば、来年にはブラウザーのためのリフレッシュされたMathML Core仕様の大枠が固まっていることになります。HTML5の一部であるにも関わらず、仕様面でこれまで欠けていたピースがはまるのもいよいよ現実味を帯びてきたと言えるでしょう。