Webサイトアクセス減少の理由は「Knowクエリ」にある?AI Overviewの影響について
アナリスト 小熊近年、AIの進化により、Googleの検索結果は大きく変化しています。「〇〇とは?」や「〇〇 メリット」といった情報収集を目的とするKnowクエリでGoogle Chrome上から検索を行うと、多くの場合、AIによる要約(AI Overview)が表示されます。
情報を調べるユーザーにとって、この機能は、検索クエリに応じた回答をその場で得られるため、複数のサイトを訪問して情報を探す手間を省くことができ、より効率的に情報収集が行えるようになりました。

一方で、この仕組みは、サイトを訪問せずに検索が完結してしまう「0クリックサーチ(ゼロクリックサーチ)」の増加にもつながる可能性があります。米国のITリサーチ会社ガートナー※の調査によると、AIチャットボットなどの普及により、2026年までに検索エンジンの利用量が25%減少するとされています。
※ガートナー社(Gartner,Inc.):米国に本社を置く世界最大規模のITリサーチ&アドバイザリー企業
本記事では、「検索クエリ」の基礎知識や「0クリックサーチ」の概要について解説します。AIO(AI Optimization)の戦略立案に、お役立ていただければ幸いです。
目次
- 「検索クエリ」とは
- 「検索クエリ」の種類について
- 0クリックサーチを生み出すAI Overviewとは
- AI Overviewが表示されるクエリとは
- 自社サイトのKnowクエリ調査方法
- AIO(AI Optimization)/ 対策方法の考え方
「検索クエリ」とは
「検索クエリ」とは、ユーザーがGoogleやYahoo!などの検索エンジンに入力する単語や文章を指します。
ユーザーが検索ボックスに入力する内容には、「特定の情報を探したい」や「アクセス方法を調べたい」といった目的が反映されています。検索クエリは単なる文字の羅列ではなく、ユーザーの意図や目的を言語化したものです。
検索クエリと似ている用語として「検索キーワード」がありますが、意味は異なります。検索クエリはユーザーが実際に検索時に入力したテキストを指し、検索キーワードは企業のマーケティング担当者などがターゲットを定める際に用いる単語やフレーズです。
検索クエリ | 検索キーワード | |
---|---|---|
内容 | ユーザーが検索窓に実際に入力した、そのままの言葉 | マーケターなどの対策担当者がターゲットとして設定する単語やフレーズ |
例 | 「オンライン会議の議事録 自動化 無料」 | 「議事録 自動化 ツール」「無料 議事録 ツール」 |
マーケティングにおいては、無数にある検索クエリを分析し、最も効果的なキーワードを抽出することで、コンテンツ戦略に役立てることができます。
「検索クエリ」の種類について
検索クエリは、「○○とは?」などのように、情報収集をしたいといったユーザーの意図が表れていることが多いです。
この検索クエリには、大きく4つのタイプがあります。検索クエリの定義はサービスや研究者によってさまざまですが、今回はGoogleの定義を参考にしています。
名称 | 概要 | 記述例 |
---|---|---|
Knowクエリ(別名:インフォメーショナルクエリ) | ユーザーが情報を知ることを目的として検索するタイプ | 「○○とは」「○○ 方法」など |
Goクエリ(別名:ナビゲーショナルクエリ) | 特定のサイトを表示させたい、特定の場所へ行きたいという検索意図が分かるタイプ | 「近くのカフェ」「Amazon 問い合わせ」 |
Doクエリ(別名:トランザクションクエリ) | ユーザーが何かの行動を実行することを目的として検索するタイプ | 「○○ 会員登録」「○○ ダウンロード」 |
Buyクエリ | ユーザーが商品やサービスを購入・契約することを目的として検索するタイプ | 「○○ 購入方法」「○○ 予約」 |
補足:括弧内はGoogleの科学者であったアンドレイ・ブローダー氏による検索クエリの定義です。
0クリックサーチを生み出すAI Overviewとは
検索クエリについて学んできましたが、Googleはユーザーが最短で疑問を解決できるよう、検索結果ページ(SERP※)上に直接回答を表示する機能を開発しました。
これは「AI Overview」と呼ばれ、Google上で検索を行うと「Google AIによる概要」として表示されます。この機能は、2024年5月に米国で公開され、2024年8月からより多くの国・地域に導入されました。さらに、2025年9月にはGoogleが日本語でも「AI モード」の提供を開始し、既に利用するユーザーも増えています。AI モードでは、検索ボックスに単語を入力する従来の方法に加え、より話し言葉に近い文章での検索も可能です。
※SERP:Search Engine Result Page(検索エンジン結果ページ)の略称

上記に加えて、「AI Overview」のようにGoogleから直接回答される仕組みには、強調スニペットやナレッジパネルなども含まれます。

検索例:「住友不動産新宿グランドタワー」
こうした機能の進化により、ユーザーは検索結果ページのリンクをクリックせずに情報を得られるようになっています。この状況は「0クリックサーチ」 と呼ばれ、ユーザーにとっては利便性の向上や情報収集の効率化につながります。
一方で、サイト運営者にとっては従来のクリックによるアクセスが減少する可能性があるため、早急に対策を行う必要があります。
AI Overviewが表示されるクエリとは
本記事の表題にもある通り、AI Overviewは主に「Knowクエリ」で表示されるといわれています。
下記図は、2025年5月19日にSEO調査ツール「Ahrefs」が公開した、AI Overviewが表示される検索クエリの分析結果※です。画像で取り上げている数値は、米国全体の検索キーワード総数2,480万を分析した結果で、AI Overviewが表示された検索クエリのうち、Knowクエリ(インフォメーショナル / 情報収集型)の割合は97.9%となっています。
この傾向は、理にかなっていると考えられます。なぜなら、AI Overviewはユーザーが「何かを購入したい」や「どこかへ行きたい」のような行動を起こす前段階である、「情報を知りたい」や「概要を理解したい」といった情報収集を手助けする機能だからです。
たとえば、「オフィスカジュアルとは」や「AI Overview 仕組み」など、検索意図が「情報収集」を目的としたクエリでは、AI Overviewが優先的に生成されます。これにより、ユーザーは検索結果上で要点を把握することができます。
一方で「○○ おすすめ」や「○○ 比較」などのDoクエリ(トランザクショナル / 取引・検討型)では、AI Overviewの表示頻度は相対的に低い傾向があります。こうしたクエリは、購買や申し込みに近い行動が想定されるため、Googleは従来どおりサイトコンテンツを通じて情報を提示する設計にしていると考えられます。
まとめると、現時点のAI Overviewは、情報収集を目的とする「認知・興味関心段階」のユーザー体験を最適化する仕組みであることがわかります。
自社サイトのKnowクエリの調査方法
アクセス減少の原因としては、Knowクエリ検索時におけるAI Overviewが表示されることが考えられます。そのため、自社サイトへの訪問時の検索クエリからKnowクエリに合致するものを抽出し、遷移先ページの対策状況を確認する方法が適しています。ユーザーの検索クエリ分析には、Google Search Consoleを使用します。Knowクエリの調査方法と抽出されたデータを用いた分析方法について解説します。
以下は、Knowクエリの抽出手順です。Knowクエリに該当するキーワードには「○○ とは」や「○○ 方法」などが当てはまりますが、想定されるキーワードは適宜調整してください。
- Google Search Consoleにログインする
- 「検索パフォーマンス」より「検索結果」を開く
- 【フィルタを追加】より【検索キーワード】を選択し、Knowクエリの想定キーワードを入力して適用する
上記の手順で、Knowクエリに該当するキーワードを抽出できます。「○○ とは」や「○○ 方法」など、複数のキーワードいずれかに合致するクエリを全て抽出したい場合は、以下の画像のようにカスタム(正規表現)を用いることで可能です。

抽出されたクエリの分析方法については、以下の観点でチェックすると対策方針を立てやすくなります。
- クリック数が低い、または発生していないクエリは、AI Overviewで解決されている可能性が高いため、実際に同クエリでGoogle上で検索する
- AI Overviewの結果を確認し、自社サイトが引用されているか確認を行う
- 自社サイトが引用されていない場合は、AIO対策を実施する。引用されている場合は、サイトへの遷移を促すために、タイトルやディスクリプション情報を見直す

AIO(AI Optimization)とは
AI Overviewに加えてAI モードの登場により、AIが普及した現在、これまでの「サイト訪問」をゴールとするSEO戦略は、限界を迎えつつあります。特に運用しているサイトへの訪問を目的としていないクエリにおいては、0クリックサーチがより顕著に表れると考えられます。
これからは、AIが検索結果画面で生成する回答の「情報源」として自社コンテンツが選ばれ、引用元としてリンクを獲得することを主眼としたAIO(Artifical Intelligence Optimization)へと戦略を進化させる必要があります。
AIO戦略の目的は、「ユーザーをサイトに訪問させるか」ではなく、「AIに情報源として採用され、引用元としてリンクを獲得するか」になります。AIに引用されることは、サイトの権威性や認知度を高める効果があるため、結果としてユーザーの流入にもつながると考えられます。
AIOとSEOの違いについては、以下の表を参考にしてください。
SEO(検索エンジン最適化 / SearchEngine Optimization) | AIO(AI最適化 / AI Optimization) | |
---|---|---|
目的 | 検索エンジン(Googleなど)のアルゴリズムや重要事項を重視し、検索結果画面での上位表示を狙うこと | AI(ChatGPTやGeminiなど)に正しく理解してもらい、文章の引用などを通じて推薦されること |
最適化の焦点 | キーワード・メタディスクリプション・被リンク・サイト構造 など | 明確なサイト構造・AIが理解しやすい文脈・プロンプト対応性 など |
コンテンツ形式 | Blog記事、ランディングページ、SEOライティング | AIが参照しやすいQ&A形式、構造化された情報(例:箇条書き) |
成果までの時間 (更新頻度などから推測) | 中長期的(数週間〜数カ月) | 比較的短期(AIに反映されやすい) |
AIOの具体的な対策方法には、「構造化データの実装」や「エンティティ対策」などがあります。対策方法の種類や効果などについては、下記の記事を参考にしてください。
LLMO対策とは?具体的な対策方法や効果測定の方法を解説 | マーケティングBlog | ミツエーリンクス最後に
本記事では、Knowクエリと呼ばれる情報収集型の検索が増え、GoogleのAI Overviewによって0クリックサーチが増加している現状を紹介しました。従来のSEOは「サイト訪問」をゴールとし、検索エンジン向けの対策がメインでしたが、今後はAI Optimization(AIO)により、AIに情報源として引用されることが重要になります。
AI Overviewは、特に「Knowクエリ(インフォメーショナル)」と呼ばれる情報収集が目的の検索で表示されます。そのため、自社サイトへの訪問時の検索クエリからKnowクエリに該当するものを抽出し、AIに引用されるための対策ができているか確認することを推奨します。AIに引用されることは、サイトの権威性や認知度を高め、結果的にユーザーの流入にもつながります。検索クエリの意図を理解し、AIに最適化されたコンテンツ設計を進めることが、これからのWeb戦略のポイントです。
当社ではAIOやLLMOだけでなく、SEOやコンテンツマーケティング、Webサイトの分析まで一貫して対応しております。Webサイトやコンテンツ運用でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。