2006年12月15日 伝えること 伝わること

ミツエーメディアクリエイティブ ディレクター
榛葉 幸哉

子供が生まれてから数カ月経った頃です。妻がある本を差し出し、「読んでおいてね」と僕に手渡しました。背表紙にうたわれたコピーには「まだ話せない赤ちゃんと話す方法」と書いてあり、自分で読んで試してみてね、と。

「あぁー」だの「うぅー」だの、まだ言葉も話せない我が子を前にして、会話だなんて、と思う反面、そのコピーにも強く惹かれ、手にとってみることにしたのです。

コミュニケーション手段

読み進めていくと、「まだ言葉が話せない赤ちゃんと会話する方法」とは、身振り手振りを使って会話を成立させる「ベビーサイン」を使うというものだと分かりました。

例えば野球の試合中、監督が右手で帽子を触ったら、打席に立っているバッターは"バントをする"の合図だ、と理解し、バントする。指示や欲求を伝える合図を決めて共有するというものです。

早速、本を参考に合図を決めて使ってみようと思いました。
しかし、ひとつの疑問が浮かびました。経験値がまだそれほどない赤ちゃんと合図の共有ができるのだろうか?と。

伝える相手を知る

例えば、"喉が渇いたよ"と伝える合図として"コップでゴクゴク飲む"仕草を使おう!と僕が思っても、今赤ちゃんにとって"水を飲む"="ストローで吸う"ことしか知らなくて、"コップから直接飲む"こと自体が未知の体験だったりします。そうすると"喉が渇いたよ"と赤ちゃんが僕に伝える合図は"ちゅっぱちゅっぱ"とストローを吸う仕草の方が経験から考えると伝わりやすそうだなとか、同様に"お腹がすいたよ"と知らせる合図はいつも僕がやる様に"お腹をさすって腹減ったー"を教えるよりは"物を口に運ぶ"仕草にして="食べたいよ"という風にした方が伝わりやすいんじゃないかと、ひとつひとつ我が子の行動を考えながら進めていったのです。

共有イメージが増えれば伝わりやすい

前置きが長くなってしまいましたが、人に物事を伝えようとする時、相手が同様の経験をしているかいないか、もしくはその一部分を知っているかいないかで、伝わるスピードは変わってきますよね。自分にとって当たり前のことだと思って話をしても相手が同様の経験をしてなければ伝える為に情報は増え、スピードは遅くなる。または同様の経験をしていても相手が同じイメージを抱いているか?というと必ずしもそうでない場合があります。このことを経験された方も多いのではないでしょうか。

相手(=ユーザー)が持っている記憶の断片、経験の一部分を呼び出す何かキッカケを用意できれば、それを基に共有イメージが構築され「共感」へとつながる道しるべになります。

「気づき」を発見する

そのキッカケとなることに気づき、取り出してビジュアライズ化(視覚化)する。
主にリッチコンテンツの企画/デザイン/実装を一貫して行っている我々は最近、求められている領域が広がっていることを強く感じています。

日々、人々の目に飛び込んでくる情報はCMや雑誌、野外広告、メールマガジンやWebコンテンツなどさまざまな媒体を介して年々増えていると言われています。そんな中で自分にとって有益な情報を取捨選別して受け取る術を既に多くの方が身につけ始めています。テレビでは見たい番組だけ録画して後で視聴したり、好きな音楽だけ持ち歩いて好きな時に聞く。インターネットではRSSリーダーで欲しい情報のみ取得、欲しければ検索して必要な分だけ閲覧する。

広告主側からいくら発信されてもユーザーにとって「欲しい情報」として認識されなければ見てもらえる機会さえも少なくなってしまいます。

そういった背景を考えると

  • 伝えたい相手であるユーザーがどんな人物像なのか?
  • どんな点が相手の嗜好性とマッチするのか?
  • 「共感」してもらうキッカケはどんなことなのか?

ひとつひとつ検証し導いていく術を出していかなければいけません。その結果、依頼いただいたソリューションとしてPC上/Web上だけでは完結しないものもあるでしょう。我々にとってもチャレンジングな領域ではありますがしっかり向き合って、マッチする方法を提供していきたいと思います。

我が子との「ベビーサイン」はどうなったか?というと試行錯誤を繰り返したおかげもあり、意思疎通のスピードは格段にあがりました。
親子の絆も深まった気がします。

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