2021年4月13日 フロントエンドの分化

取締役(CTO)
木達 一仁

当社は古くからマトリクス組織を採用しており、ディレクター職と制作職のそれぞれを束ねる2つの横軸組織が存在します。私はそれらの管掌を担当しているのですが、4月のこの時期はいずれにおいても縦軸組織と同様、昨年度の振り返りと今年度の施策の検討に忙しくしています。

制作職のほうの横軸組織で議論しているテーマに、フロントエンドの分化への対応があります。当社ではHTMLやCSS、JavaScriptを用いWebコンテンツの設計や実装を担う職種名として唯一「UI開発者」を用いていますが(コラム「UIデザイナーとUI開発者」参照)、その責任範囲を一括りにして扱うことの難しさが、いよいよ顕在化してきたのです。

業界全体を俯瞰すれば、その種の難しさは、決して目新しいものではありません。例えば2019年1月にCSS-Tricksに掲載されたChris Coyier氏の記事「The Great Divide」では、スキルセットの違いがフロントエンドの開発者にもたらす一種の分断について考察しています。

記事の出だしで、同じ肩書を自称する2種類の人物像が描かれます。片や、その興味・関心や責任範囲がJavaScriptに偏った人物。片やHTMLやCSS、ビジュアルデザイン、アクセシビリティといった領域のスキルセットを有する人物。個人的な感覚としても、良し悪しはさておき、大雑把には確かにそのような二分が可能に思えます。

ドキュメント志向よりもアプリケーション志向へのニーズが相対的に高まり、それに応えるべくWeb標準やWebブラウザのケイパビリティが向上、またNode.jsの登場を端緒としてJavaScriptの応用範囲が飛躍的に拡大した経緯を思い返せば、フロントエンドと称される領域の拡大と分化は、Webのプラットフォーム化にとって避け難い不可逆変化かもしれません。

歴史をどう解釈するかはともかく、今日あるまでに領域が拡大・分化したフロントエンドを踏まえ、制作物の品質向上や教育にどう取り組むかは、当社が直面しているチャレンジのひとつと捉えています。UI開発者という職種を分化させない前提では、各人のスキルセットやスキルレベル、興味・関心、将来への志向性をも加味して、プロジェクトへの最適なアサインを実現したいところです。

一つ、参考になる記事があります。Atomic Designという考え方を提唱、書籍『Atomic Design』の著者として知られるBrad Frost氏が書いた「front-of-the-front-end and back-of-the-front-end web development」です。彼は、フロントエンド開発者を独自の視点で大別し、役割や責任範囲を定義しています。

A succinct way I’ve framed the split is that a front-of-the-front-end developer determines the look and feel of a button, while a back-of-the-front-end developer determines what happens when that button is clicked.

Frost氏のアイデアを参考に、要件や特性に基づいてプロジェクトを分類、それぞれに相応しいUI開発者をアサインしたり、制作物への適切なレビューを行うことにより、冒頭で触れた課題に対応することを、目下検討中です。実現の暁には、フロントエンド寄りであれバックエンド寄りであれ、実務を通じた学習・成長を一層期待しやすくもできればと考えています。

以前からある当社らしさ、つまりWeb標準準拠やアクセシビリティ、表示パフォーマンスといった品質へのこだわりを損ねることの無いよう、社内のUI開発者同士でしっかり連携しつつ、フロントエンドの分化というトレンドに対応することが、制作職の横軸組織における今年度の重要な取り組みの一つとなりそうです。

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