防災情報とアクセシビリティ

アクセシビリティ・エンジニア 辻

今年は大きな災害がいくつも発生しており、それに伴って防災情報を見聞きする機会も多くあったのではないでしょうか。 私もここ数年、住んでいる地域の防災情報をメールで受け取れるように登録したり、気象警報などが発表された際に通知を受け取れるアプリをインストールしたりして、できるだけ災害に備えるようにしています。

iPhoneのVoiceOverはメールやアプリの通知内容を読み上げることができるので、届いた情報はほぼタイムラグなく受け取ることができます。 雨雲が近くまで接近してきていること、警報が発表されたこと、避難準備情報が発表されたことなど、近隣の情報を手に入れられるようになったことはスクリーン・リーダーなどの支援技術を活用しながら生活している私にとってとてもありがたいことです。

とはいえ、中には私が把握できない (スクリーン・リーダーで内容を読み上げられない)情報も少なからずあります。 代表的な物は、危険がある地域と避難先の情報が掲載されているハザードマップで、多くの場合は画像だけで情報提供されているようです。

先日、台風12号が接近した際、私が住んでいる自治体からも防災情報のメールが配信されました。 文面には、土砂災害警戒区域や浸水想定区域が記されたハザードマップのリンクをホームページのトップ画面に掲載しているので詳細を確認してほしい旨が記載されておりましたので、私も近隣の情報を確認できればとホームページにアクセスしてみました。

困ったことに、掲載されていたハザードマップは画像だけで構成されており、代替情報も提供されていなかったのでスクリーン・リーダーでは必要な情報を得ることができませんでした。 幸いにも今回、私の住んでいる近隣地域では大きな災害が発生しなかったので事なきを得たのですが、防災情報はそれを必要としている人に過不足なく伝えられるような仕組みが必要だなと感じました。

私の知る限り、現在は防災情報をアクセシブルに提供するためのガイドラインや仕組みがまだありません。 しかしながら、災害はいつどこで発生するかが予想できないので、できるだけ早く情報を整備していく必要があると思います。

今回例に挙げたハザードマップも、例えば表や定義リストを使用したり、地域名から近隣の危険箇所をテキスト情報で提供するような検索システムなどを作ることで、画像以外の手段で情報を発信することも不可能ではないと思います。

とはいえ、私の不十分な知識だけではどうすれば防災情報をアクセシブルな状態で多くの人に届けられるかがわかりません。 機会があれば、皆さんと一緒に防災情報のアクセシビリティについて検討していけたらと考えているところです。