WebAIMが9回目のスクリーンリーダー調査の結果を公開

アクセシビリティ・エンジニア 大塚

今年の5月に当Blogで公開した記事、「WebAIMが9回目のスクリーンリーダーに関する調査を開始」で触れた調査の結果が公開されました(WebAIM: Screen Reader User Survey #9 Results)。

有効回答数は1568件と、2019年に行われた前回の調査と比べ増加しました。回答者の地域については、前回と同様過半数が北米からのものとなっていましたが、アジア地域からの回答も8.2%含まれていました。

調査結果の中で特に印象的だったのが、デスクトップ/ラップトップで最も利用しているスクリーンリーダーとして、JAWSを挙げる人が再びNVDAを抜きトップとなったことです。JAWSの利用率については、これまで減少傾向が続いていましたが、ここにきて再び増加しました。ただし、利用率は地域により大きく違っており、北米やオーストラリアではJAWSの利用率が最も高くなった一方、ヨーロッパやアジアなどではNVDAの利用率がJAWSを上回っています。

スクリーンリーダーとともに利用されるブラウザについては、Chromeがトップとなったのは前回と同様ですが、Microsoft Edgeの利用率が大きく増加し、2番目に多く利用されるブラウザとなりました。これは、Microsoft EdgeがChromiumベースのものへと更新され、Chromeに近い操作感で利用できるようになったことが影響しているのではと考えられます。

モバイルデバイスの利用状況には、それほど大きな変化はありませんでした。モバイルデバイスでスクリーンリーダーを利用するユーザーは引き続き増加しており、プラットフォーム別にみると、iOSの利用率が最も高くなり、Androidの利用率がわずかに減少しました。

また、Webページ上で情報を探す方法としては、前回と比較するとわずかに減少したものの、見出しの一覧を確認するユーザーが最も多くなりました。さらに、見出しレベルが有用であると回答したユーザーが8割を超えており、適切な見出しの設定の重要さを改めて感じました。

ドキュメントのアクセシビリティについての回答も興味深いものとなっていました。EPUB、PDF、Word、その他の中から、最もアクセシブルなドキュメントフォーマットを問う質問では、Wordが最もアクセシブルなフォーマットであると回答した人が7割弱となりました。Wordの機能で見出しやリスト、表などを設定した文書をスクリーンリーダーで閲覧すると、Webページに近い感覚で文章を閲覧できるので、個人的にもWord文書は比較的アクセシブルであると感じています。しかし、見出しやリストなどが適切に設定されておらず、スペースなどでレイアウトの調整が行われているものなど、読みづらさを感じるWord文書を見かけることも多くあります。今後は、Webページのアクセシビリティとともに、ドキュメントのアクセシビリティのさらなる改善にも携わっていきたいです。

最後に、利用しているメールクライアントについては、59%の人がOutlookもしくはOutlook.comと回答していました。今回のアンケートの選択肢には存在しませんでしたが、Thunderbirdを使用しているという回答者が一定数いたとのことです。

調査結果の詳細については、英語ではありますが、WebAIM: Screen Reader User Survey #9 Resultsからぜひご覧ください。