Web Almanac 2025にみるWebアクセシビリティ
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)HTTP ArchiveによるThe 2025 Web Almanacが先月公開されていました。この記事は、木達によるコラム2025年版Web Almanacにみる、アクセシビリティと表示パフォーマンスの現状で予告されていたものになります。(2024年版のものについては、Web Almanac 2024に見るWebアクセシビリティもご覧ください。)また、先行する類似の記事としては、mehm8128氏のWeb Almanacから見る2025年のWebアクセシビリティがあります。
さて、2025年版のAccessibilityの章では、全部で39の見出しが設けられており、2024年版と比べて、見出しが1つ増えたことになります。なお、増えた見出しはThe Impact of Artificial Intelligence (AI)という、AIに関する記述です。これについては後ほど見てみます。さて、目に付いた箇所について、2024年版と比較しつつ、ピックアップして見ていくことにします。
総論としては、Lighthouseのスコアの中央値は2024年では84%だったものが2024年のデータでは85%と1ポイント上昇したとのことです。スコアとしては引き続きわずかに改善しているといえるでしょう。
Figure 6.2. Most improved Lighthouse accessibility tests (axe)では2024年と改善が見られたaxeのルールとして、次の7つを挙げています。
- ARIA input fields must have an accessible name (
aria-input-field-name) - ARIA meter nodes must have an accessible name (
aria-meter-name) - ARIA progressbar nodes must have an accessible name (
aria-progressbar-name) - ARIA tooltip nodes must have an accessible name (
aria-tooltip-name) - Delayed refresh under 20 hours must not be used (
meta-refresh) <object>elements must have alternate text (object-alt)<select>element must have an accessible name (select-name)
7つのうち5つがアクセシブルな名前(accessible name)なのは興味深いところです。これは、Lighthouseで計測できるからというところは大きいと思いますが、HTMLネイティブの要素である<select>に名前が付けられるサイトが増加しているというのは前向きに捉えられるのではないでしょうか。
ページの言語(lang属性)のデータは、モバイルサイトで2024年では84.0%だったものが、2025年では85.9%と、1.9ポイント増加しています。2022年から2024年の比較が1.3ポイントの増加、2021年と2022年の比較が2.5ポイントの増加であり、トータルで見ると同じようなペースで増加しているとみるのがよさそうです。
見出しの階層のデータについて、モバイルサイトでの2022年から2024年の推移は、0.1ポイントの減少とほぼ横ばいでしたが、2025年では、1.0ポイントの増加となりました(数値としては58.6%)。
画像の代替テキストについては、2024年でalt属性が提供されていたサイトが66.2%であり、2025年では69.1%となり、2.9ポイントの上昇となりました。このうちalt属性を持ち、なおかつ代替テキストの内容にファイル拡張子を含むものは、モバイルサイトで8.5%と報告されています。これは2022年には7.5%、2024年は5.1%(この年はデータが修正されているようです)と落ち込んだ時期もありますが、再び増加するあたりは、CMSなどで機械的にalt属性値をファイル名で埋められる状態をそのままにしているサイトが増加しているとみることができそうです。
さて、前出のThe Impact of Artificial Intelligence (AI)(AIの影響)のセクションについて触れてみることにします。
まず、WebアクセシビリティツールはLLM(大規模言語モデル)への依存度が高まっているとしています。プラットフォームによっては、画像の説明不足を補う手段としてAI生成テキストを提供しているものの、自動化ソリューションの品質と精度には大きなばらつきがあるとしているあたりは、肌感覚と一致するところでしょう。また、コンテンツ制作に当たっては、コードの修正支援にAIを用いるというシーンも多々あるのではないかと思われます。
一方で、AIがWebサイトやコンテンツを作成または改善したかどうかを判断する標準的な方法はないとしています。AIが作成したかどうかを区別する必要があるのかという根本的な疑問はありますが、AIを用いることでどの程度アクセシビリティが改善したのかを比較検討する手段があってもよいのかもしれません。また、AIの出力結果を鵜呑みにしてはならないとしていますが、これは言わずもがなでしょう。
AIはアクセシビリティを超えた重大な倫理的懸念を引き起こすとして環境負荷を挙げているのは、いかにも海外の記事でよく見られる論調だなという気もしますが、実際に電力の消費が激しいというのはよく知られているところです。また、学習データがどのように収集され、使用されるのかという点も挙げています。
結局のところは、AIは強力なツールであるものの、あくまで補助ツールに位置づけられるものであって、人間の専門家によるレビューがまだまだ必要とされるという一般的な話に落ち着きます。
全体をまとめますと、マクロな視点では、Webアクセシビリティが劇的に変化したわけではありません。この傾向については、2024年版と同じです。ただ、Webアクセシビリティの改善の一歩として、そして定期的なモニタリングとしてLighthouse(あるいはaxe)は有用であり、Lighthouseを活用していきましょうという言葉で締めくくりたいと思います。