企業のソーシャルメディア戦略における、新たな成功指標
Bowen Craggsは「企業メッセージにおけるSNSの活用度」という新しい指標を、当社の報告書「Corporate Digital Communications Index」に導入しました。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2025年1月28日に公開された記事「A new measure for success in corporate social media」の日本語訳です)
今となっては信じがたいことですが、かつて多くのコミュニケーション担当者は、SNSが企業コミュニケーションにおいて本当に重要な役割を果たすのか、懐疑的でした。私がそうハッキリ言えるのは、2007年に受け取ったメールに、証拠が残っているからです。当時、SNSは企業コミュニケーション担当者なら誰もが注目すべき、次の大きなトレンドとして、メディアで盛んに取り上げられていました。
しかし、しばらくの間、私の周囲には「いわゆる『ソーシャルメディア』」について、冷ややかに語る記事のリンクを送ってくる人や、「どうせ一過性のブームだろう」と疑いの目を向ける人がいました。結果は、ご存じの通りです。その後、SNSは革新的な進化を遂げ、数年間で確固たる地位を確立しました。そして、LinkedIn・Twitter・YouTube・Facebook・Instagramといった主要な5つのソーシャルメディアは、企業コミュニケーションにおいて欠かせない存在へと定着したのです。
中毒性の高いアルゴリズムで成長したTikTok、イーロン・マスク氏によりTwitterから変貌したXなど。あとはもう、おわかりでしょう。今、環境は大きく変化していて、企業のSNS活用が「第2幕」に突入しようとしています。この新たな時代には、企業がSNSを導入し始めたころと同じように、多くのリスクと可能性が存在します。企業は、常に最新の動向に目を光らせ、自社のコミュニケーション目標やステークホルダーとの関係構築に最適なプラットフォームを、BlueskyやThreadsといった新しいプラットフォームも含め、慎重に選択する必要があります。
このような状況の変化を受けて、Bowen Craggsは「企業メッセージにおけるSNSの活用度」という新しい指標を、当社の報告書「Corporate Digital Communications Index」に導入しました。 私たちは、企業のソーシャルメディアが登場した当初から、ベンチマーク調査やコンサルティングを通じて、ソーシャルメディアの動向を分析してきました。 そして、ソーシャルメディアのチェックは、私たちの分析手法において、非常に重要な要素の1つとなっています。この新しい指標によって、企業のコミュニケーション担当者は競合他社と比較しながら、ソーシャルメディア戦略の成功度を、初めて具体的な数値として把握できるようになります。
誤解を避けるためにお伝えしますが、この新しい指標は、企業のデジタル担当部門がSNSの日々の効果測定に用いるエンゲージメントデータに置き換わるものではなく、あくまで補完するものです。企業のソーシャルメディア戦略が、トレンドやフォロワーの期待に沿った、一貫性があり、適切なものかどうかを、専門家の視点から年に一度、総合的に確認するチェックだとお考えください。
この新しい指標が、インデックス内の評価対象である約120社に、完全に浸透するのには、およそ1年かかる見込みです。しかし、すでにいくつかの企業が、バランスの良いソーシャルメディア戦略を展開し、特定のチャネルを効果的に活用して企業の魅力を伝え、積極的にエンゲージメントを獲得していることが分かっています。
この指標は、進化するソーシャルメディアのトレンドを把握するだけではなく、Bowen Craggsの顧客企業がソーシャルメディアでのコミュニケーションに、新たな発想を取り入れるためのヒントとなる、優れた事例を提供する役割も果たします。

Verizonは、自社のソーシャルメディアを積極的に活用していて、verizon.comのサイト内にソーシャルメディアの投稿を埋め込むなど、斬新な手法を取り入れています。
ここでは、特に注目すべき事例を、いくつかご紹介します。
- アメリカの通信大手Verizonは、ソーシャルメディアを画一的に運用するのではなく、LinkedIn・Facebook・X・Instagramといった各プラットフォームで、ニュースや環境問題、従業員や求職者、顧客といったターゲット層に合わせて、複数のアカウントを使い分けています。この手法は、どの企業にもそのまま適用できる戦略ではありませんが、そこが重要なポイントです。大胆なアプローチで、より効果的な情報発信が可能になることを示しています。
- ソーシャルメディアの試みは、必ずしも成功するとは限らず、時には終了することもあります。例えばVerizonは、現在は運用を終了した「Verizon News」のInstagramフィードを更新し、サービス終了を知らせる投稿1つだけを残すことで、尊厳と明確さをもって撤退する方法を示しています。代替アカウントへの誘導も、丁寧に記載しています。これは、単に放置したり不要な投稿を削除したりするよりも、はるかに誠実で透明性の高い対応と言えるでしょう。
- イタリアのエネルギー企業Eniは、これまで公式Webサイト「eni.com」で、企業の透明性について大胆な姿勢を示してきました。そして今回、多くの企業が避けたがるネガティブな情報の公開に挑戦しました。イタリアのCalenzano燃料貯蔵所で発生した火災について、LinkedInとXで情報を公開し、詳細をeni.comで確認できるように、リンクを掲載したのです。ソーシャルメディアであっても、企業の情報をオープンかつ誠実に伝えることは可能だと言うことを示しています。
- ノルウェーのエネルギー大手Equinorは、公式LinkedInに多くのニュースやプレスリリースへのリンクを掲載しています。Xの運用から撤退する企業が相次ぐなか、これはリリースやメディア関連情報発信の新たな場所としての、LinkedInの可能性を示しています。Bowen Craggsの「次世代のステークホルダーに関する調査」によると、すでに多くの人がLinkedInを企業のニュースソースとして利用していることが分かっています。Equinorは、LinkedInで定期的にニュースを発信することにより、equinor.comで強調しているイノベーション・グリーンエネルギー・パートナーシップといった主要メッセージの、さらなる訴求に役立てています。
現在のソーシャルメディアを取り巻く環境の激しい変化は、コミュニケーション担当者にとって難しい問題です。同時に、他社から学び、新しい手法を試し、企業のソーシャルメディア戦略を見直して、これまでにない変革を生み出す絶好の機会でもあります。そして、Bowen Craggsの新しい指標が、企業のソーシャルメディア戦略の進化を促し、革新的な発想を生み出す一助となることを願っています。