企業のデジタル担当者が知っておくべき、YouTubeを最大限に活用する方法
YouTubeは「ビッグ5」と呼ばれる、主要なSNSのひとつで、ほとんどの企業がアカウントを持っています。加えて、アメリカの老若男女に、最も人気のあるソーシャルプラットフォームとなっています。アメリカのシンクタンクPew研究所のデータによれば、アメリカでは成人層の85%、10代に至っては90%が、YouTubeを利用しているそうです。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2025年3月31日に公開された記事「Maximising YouTube: what corporate digital communicators need to know」の日本語訳です)
これまでの歴史の中で、企業はYouTubeを単なる「動画の保管庫」として利用しがちでした。ひどい場合には、古くなった映像や撮影の副産物、他のSNSや自社サイトから転用したコンテンツが、忘れ去られたかのように放置されている"動画のゴミ捨て場"のような状態になっていることもありました。
しかし、YouTubeは単に動画を保管するだけの場所ではありません。適切に活用すれば、企業の評判やブランドイメージを築き、高めていくための強力なツールとなり得るのです。

Pew研究所が調べたYouTubeの使用概況
YouTubeが今、これまで以上に重要な理由:
- 検索エンジンとしての役割が拡大している
YouTubeは、Googleに代わる検索ツールとして、ますます人気が高まっています。現在の検索シェアでは、Googleが83.54%と圧倒的ですが、YouTubeも6.79%を占め、ChatGPTの4.33%を上回っています。これは、多くの人々が企業や業界について調べるために、YouTubeを利用していることを意味します。
- 生成AIアルゴリズムに活用されている
YouTubeの動画コンテンツは、生成AIアルゴリズムによって盛んに吸収されています。だからこそ、YouTubeには正確で信頼性のある企業情報を掲載することが重要です。動画の文字起こしや自動生成される字幕は、まさに「AIを進化させている」と言えるでしょう。
- ショート動画の、リスクの少ない発信チャネルとなっている
TikTokの利用をためらっている企業の担当者にとって、YouTubeショートは、魅力的なショート動画を安心して投稿できるチャネルとして、人気が高まっています。
- 主要な閲覧者層とつながれる手段である
YouTubeのコメント欄は、企業と閲覧者とのコミュニティーの場であり、エンゲージメントの機会でもあります。ですから、コメント機能をオフにしてしまうと、大きなチャンスを逃すことになります。
YouTubeでの「ベストプラクティス」とは?
企業のYouTubeチャンネルでは、内容が充実している横向きの動画を、きちんと整理したプレイリストにまとめて、常に最新の状態に保つことが、成功のための基本とされています。
閲覧者にとって本当に役立つ内容の長尺動画は、もちろん高い効果を発揮します。一方、TikTokのように短いYouTubeショートも、同様に効果を発揮するでしょう。
そして、YouTubeが検索エンジンのように使われることが増えている今、動画のタイトルや説明文は、明確で内容を的確に説明するものにしてください。SEOの基本を押さえて、企業の決まり文句や専門用語を避けることが重要です。
動画の字幕や文字起こしは、自動生成されたものではなく、人間の手で編集・修正したものを用意するのが望ましいです。そうすることで、障がいのある方々を含め、より多くの人が内容にアクセスしやすくなり、動画の内容を理解しやすくなります。
他のソーシャルメディアと同様に、堅苦しくてありきたりな動画コンテンツは、決して高い効果を生み出しません。閲覧者の興味を引く内容であり、貴社の専門性を深く掘り下げ、働く社員の魅力を伝え、本物のストーリーを語る動画こそが、効果を発揮するのです。
YouTube活用に成功した企業の好事例:
- ドイツの大手エンジニアリング企業Boschは、YouTubeショートを試用しています。同社のYouTubeチャンネルには、製品紹介や企業情報だけではなく、会社の沿革を振り返る動画などもあり、企業としてのコンテンツを充実させています。このような情報を、ショート動画という斬新で魅力的なフォーマットを使って伝えることで、閲覧者の興味を引きつけています。
- イギリスのメガバンクHSBCは、メインのグローバルYouTubeチャンネルで、「Power Up」というタイトルのポッドキャストを開始しました。このポッドキャストは、人々が「どのように最高のパフォーマンスを発揮できるか」に焦点を当てたインタビューシリーズです。YouTubeチャンネルには専用のポッドキャストタブを設けていて、YouTubeショートも並行して公開しています。特筆すべきは、この「Power Up」が開始からわずか1カ月で大きな反響を呼んだこと、そして、一部のYouTubeショート動画が、数十万回の再生回数を記録していることです。これは、YouTubeというプラットフォームで、質の高いコンテンツがどれほど大きな影響力を持つか、を示す好例と言えるでしょう。
- オーストラリアのエンジニアリング会社Aurecon Groupも、YouTubeショートの活用に取り組んでいます。同社がショート動画で公開している、世界各地のオフィスを巡るオフィスツアー動画は、企業についてもっと知りたいと考えている求職者にとって、非常に有益なコンテンツです。自社の公式サイトからもリンクしています。オフィス紹介にYouTubeショートを活用するケースはまだ珍しく、この簡潔な形式が、普段見ることができない職場のリアルな様子を、ありのままに伝えています。
- ロンドンに本社を置く鉱業大手Rio TintoのYouTubeチャンネルは、動画をきめ細かくカテゴリー分けしたプレイリストで整理し、常に最新の状態に保っている好例です。多岐にわたる情報満載の動画群は、閲覧者がYouTubeチャンネルを直接訪問しても、YouTube検索で特定の情報を探しても、会社の全体像を深く理解できるように工夫しています。