問題を解決するUXデザイナー、問題を定義するUXデザイナー

インフォメーションアーキテクト 前島

"If I were given one hour to save the planet, I would spend 59 minutes defining the problem and one minute resolving it.(もし私が地球を救うために1時間を与えられたら、59分を問題の定義に使い、1分をその解決に使うだろう)"とアインシュタインは言いました。
同じことがUX分野でも言えます。

SEEK Asia社でプロダクトマネージャーを務めるAndrew Greenは以下のような会話をよく耳にしたと言います。

A「いま僕らが取り組むべき問題は何だと思う?」
B「そうだな、モバイルアプリを立ち上げるべきだろうね」
A「それが本当に問題だとなぜわかるの?」
B「モバイルユーザーの数を見てみろよ」
A「その問題は解決するだけの価値があるのかどうかは?」
B「だってモバイルはみんな持っているしな」
A「じゃあその問題が解決されたかどうかはどうすればわかるの?」
B「アプリがたくさんダウンロードされれば解決だな」
A「う~ん、問題が解決されたよい状態とはユーザーがどのようになった状態なんだろう?」
B「だからアプリだってさっきから言っているだろ」

このようなやりとりは悲劇です。

その結果ユーザーにとって必要のない製品やサービスが生み出されてしまうのです。
"Solutionism"に取り憑かれ、解決すべき問題は何なのか?それが本当に問題なのか?を検討することをすっかり忘れてしまっているからです。
ではどのように問題を定義することができるのか?

Andrew Greenが推奨するのは彼が「Problem Space」と呼ぶマトリクスを用いる方法です。

The Problem Space
  1. What is the problem we're trying to solve?(我々が解決しようとしている問題は何か?) まずはじめに今問題とされていることをマトリクスの左上に記入します。 今回の例では「香港の人々は働き過ぎなので恋愛をする時間がない」です。
  2. How do we know It's a real problem?(それが本当に問題だとどうわかるのか?) 次にそれが問題とされる理由や根拠となるデータを右上に記入します。 今回の例では「実際ほとんどの時間を仕事に充てていること(有給休暇も少ないこと)」や「世界幸福度ランキングも世界で75位と低いこと」などです。
  3. Is this problem worth solving?(その問題は解決するだけの価値があるか?) それが本当に問題であった場合、その問題を解決することの意義を左下に記入します。 「香港の人口は700万以上であること(700万以上の多くの人々に影響のある問題であること)」や「人間の幸福度は健康に寄与するという研究結果があること」、「幸福度の高いスタッフが働く企業の株価パフォーマンスは高いという研究結果があること」など。
  4. How will we know when we've solved this problem?(この問題が解決されたかどうかどのように知るのか?) 最後にその問題が解決された状態を右下に記入します。 「2018年の世界幸福度ランキングで50位以内にランクしている」「結婚する人々の増加」「出産数の増加」などです。

このように問題となる根拠や影響度を分解し、あるべき姿も明確化した上でソリューションを考えることで、より本質的な問題に私たちが取り組んでいくことが可能になります。

Andrew Greenがすすめるもうひとつの方法はIAにはお馴染みのカスタマージャーニーマップを用いた問題の定義方法です。

Airbnbのユーザー体験を例にした場合、サイトに訪れたユーザーの行動ステップは以下のようなものになります。

  • 多くの物件を検索することができる
  • 興味のある物件を簡単に選ぶことができる
  • その物件周辺の情報が得られる
  • 予約するためその物件のホストに簡単に問い合わせることができる
  • そのホストからタイムリーに返信がくる
  • 不安なく支払い手続きができる
  • 当日物件までスムーズにたどり着くことができる
  • ~以下ステップ略~

そして各ユーザーステップについてビジネス上の指標としての重要度と現在のユーザーの満足度を記入し、そのギャップの大きいものほど優先して取り組むべき問題であると定義するわけです。
(今回の例ではホストからの返信タイミングに問題があると考えられるため優先して改善していく必要があると判断される)

TAirbnbのUser Journey NeedsとProblem Size例


気付くべきはいずれの方法も問題の定義と合わせて理想の状態や体験を定義した上で、現状とのギャップをどのように解決するのかという考え方となっていることです。
これはUXを考えるにあたり欠かせない視点のひとつなのです。

UXHK: Falling in love with the problem, rather than the solution(Andrew Green)より