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UX Blog

UXデザインの国内外の最新動向をお伝えすると共に、弊社内の日々の業務や勉強会/イベント等で得た学びや、考察したことについて共有して参ります。当Blogの更新情報は、Twitter経由でも配信しています。興味のある方はぜひ、@mlc_uxをフォローしてください。当Blogへのご意見・ご質問は、Twitter経由でも受け付けております。

IA Summit 2017開催!今年のテーマはAI!?

インフォメーションアーキテクト 前島

インフォメーションアーキテクチャのグローバルカンファレンスとして毎年北米エリアで行われるIA Summitが今年も3/22から開催されます。

18回目を迎える2017年のIA Summitの開催地はカナダ・バンクーバー。テーマは「Designing for Humans」で、副題は「IA, meet AI.」です。

昨年米国アトランタで開催されたIA Summit 2016では、JJG(Jesse James Garrett)によるクロージングプレナリーで、これから私たちはUser Experienceを超えて"Human Experience"としてユーザー体験を理解することと"Humanity(人間らしさ)"の実現を説きました。

昨今のAIやディープラーニング等の進歩は目まぐるしく、いま私たちは"Machine(機械)"と"Human(人間)"の関係性をあらためて再構築し、人々のためのデザイン(Designing for Humans)を見つめ直すタイミングにあるのかもしれません。

興味深いトピックなど弊社コラムや本UXブログで随時取り上げてまいりますのでお楽しみに!

botにUXが必要な理由

インフォメーションアーキテクト 前島

昨年オーストリアのウィーンで"ChatbotConf 2016"が開催されたのをご存知でしょうか?
ヨーロッパエリア初のチャットボットやモバイルメッセージアプリに関する国際カンファレンスとなり、Facebook、Google、Microsoft、IBM、Slack、Viber、LINEなど業界を牽引する企業が一堂に会しました。

AI、メッセージアプリ市場の成長

IBMのCEOであるGinni Romettyは"This era will define the relationship between man and machine.(この時代に人間と機械の関係性が再定義されるであろう)"と言い、本イベントに登壇した同社Christoph Auer-Welsbachは、2020年までにAI市場は700億ドル規模に成長し、顧客とのやりとりの85%が人間を介さないものになるだろうと予測します。 またBI Intelligenceのデータはメッセージアプリの月間アクティブユーザー数が2015年にSNSアプリのユーザー数を逆転し伸び続けていることを示しています。


AIはユーザーの感情面のニーズを扱えるようになってきており、人間の特性である「思いやり」「直感」「創造性」「価値観」「一般常識」などと、機械の特性である「ディープラーニング」「発見性」「大規模数理」「事実確認」などを結合させることで世界を変えるようなAIシステムやソリューションを作り出すことができると話しています。

オンボーディングのUX

Slack社のAmir Shevatは多くのSlack Botが失敗する理由の一つとして、オンボード時のユーザー体験を指摘しています。
例えばSlackチームに新しいbotを投入する際、メンバー全員にダイレクトメッセージを送れば簡単に追加が済むだろうと考えるかもしれないが絶対にそのようなことはしてはいけないと言います。
それはチームに新しい同僚を一人追加する際、どのように彼をオンボーディングすべきかと同様に考える必要があるためです。
まずは最初にやりとりすべき適切な人と接点をもたせ、その後適切なチャネルに追加するなど、
botをSlackに追加された新しい仲間のように扱うことが大事だと言います。

また後半には"どのように私たちはプロダクトを体験しているか?"と疑問を投げかけ、カンバセーションデザインについても触れています。

ストーリーのUX

Wit.aiのMartin Raisonは、なぜ優れたUXがチャットボットに必要なのかと言うと、私たちはコンピューターに人間との会話を教えることはできるが、人間にコンピューターとの会話を教えることはできないからだと言います。
彼は完全な対話型AIは非常にハードルが高いものであるとした上で、フローチャート図を用いたワークフローを定義しストーリーを作ることでユーザー体験を設計する方法を説明しています。

まとめ

Slackの例はbotをまるで人間のように扱い、Wit.aiはbotをプログラミングされた機械として扱っています。あえて対照的なセッションを取り上げましたが、共通しているのはユーザー視点での体験設計が大事であり、カンバセーショナルな(対話型の)UX/UIが今後ますます重要視されてくるということです。

本カンファレンスのすべてのセッションはこちらで閲覧可能ですので是非ご視聴ください。
The official oratio YouTube channel

問題を解決するUXデザイナー、問題を定義するUXデザイナー

インフォメーションアーキテクト 前島

"If I were given one hour to save the planet, I would spend 59 minutes defining the problem and one minute resolving it.(もし私が地球を救うために1時間を与えられたら、59分を問題の定義に使い、1分をその解決に使うだろう)"とアインシュタインは言いました。
同じことがUX分野でも言えます。

SEEK Asia社でプロダクトマネージャーを務めるAndrew Greenは以下のような会話をよく耳にしたと言います。

A「いま僕らが取り組むべき問題は何だと思う?」
B「そうだな、モバイルアプリを立ち上げるべきだろうね」
A「それが本当に問題だとなぜわかるの?」
B「モバイルユーザーの数を見てみろよ」
A「その問題は解決するだけの価値があるのかどうかは?」
B「だってモバイルはみんな持っているしな」
A「じゃあその問題が解決されたかどうかはどうすればわかるの?」
B「アプリがたくさんダウンロードされれば解決だな」
A「う~ん、問題が解決されたよい状態とはユーザーがどのようになった状態なんだろう?」
B「だからアプリだってさっきから言っているだろ」

このようなやりとりは悲劇です。

その結果ユーザーにとって必要のない製品やサービスが生み出されてしまうのです。
"Solutionism"に取り憑かれ、解決すべき問題は何なのか?それが本当に問題なのか?を検討することをすっかり忘れてしまっているからです。
ではどのように問題を定義することができるのか?

Andrew Greenが推奨するのは彼が「Problem Space」と呼ぶマトリクスを用いる方法です。

The Problem Space
  1. What is the problem we're trying to solve?(我々が解決しようとしている問題は何か?) まずはじめに今問題とされていることをマトリクスの左上に記入します。 今回の例では「香港の人々は働き過ぎなので恋愛をする時間がない」です。
  2. How do we know It's a real problem?(それが本当に問題だとどうわかるのか?) 次にそれが問題とされる理由や根拠となるデータを右上に記入します。 今回の例では「実際ほとんどの時間を仕事に充てていること(有給休暇も少ないこと)」や「世界幸福度ランキングも世界で75位と低いこと」などです。
  3. Is this problem worth solving?(その問題は解決するだけの価値があるか?) それが本当に問題であった場合、その問題を解決することの意義を左下に記入します。 「香港の人口は700万以上であること(700万以上の多くの人々に影響のある問題であること)」や「人間の幸福度は健康に寄与するという研究結果があること」、「幸福度の高いスタッフが働く企業の株価パフォーマンスは高いという研究結果があること」など。
  4. How will we know when we've solved this problem?(この問題が解決されたかどうかどのように知るのか?) 最後にその問題が解決された状態を右下に記入します。 「2018年の世界幸福度ランキングで50位以内にランクしている」「結婚する人々の増加」「出産数の増加」などです。

このように問題となる根拠や影響度を分解し、あるべき姿も明確化した上でソリューションを考えることで、より本質的な問題に私たちが取り組んでいくことが可能になります。

Andrew Greenがすすめるもうひとつの方法はIAにはお馴染みのカスタマージャーニーマップを用いた問題の定義方法です。

Airbnbのユーザー体験を例にした場合、サイトに訪れたユーザーの行動ステップは以下のようなものになります。

そして各ユーザーステップについてビジネス上の指標としての重要度と現在のユーザーの満足度を記入し、そのギャップの大きいものほど優先して取り組むべき問題であると定義するわけです。
(今回の例ではホストからの返信タイミングに問題があると考えられるため優先して改善していく必要があると判断される)

TAirbnbのUser Journey NeedsとProblem Size例


気付くべきはいずれの方法も問題の定義と合わせて理想の状態や体験を定義した上で、現状とのギャップをどのように解決するのかという考え方となっていることです。
これはUXを考えるにあたり欠かせない視点のひとつなのです。

UXHK: Falling in love with the problem, rather than the solution(Andrew Green)より