botにUXが必要な理由

インフォメーションアーキテクト 前島

昨年オーストリアのウィーンで"ChatbotConf 2016"が開催されたのをご存知でしょうか?
ヨーロッパエリア初のチャットボットやモバイルメッセージアプリに関する国際カンファレンスとなり、Facebook、Google、Microsoft、IBM、Slack、Viber、LINEなど業界を牽引する企業が一堂に会しました。

AI、メッセージアプリ市場の成長

IBMのCEOであるGinni Romettyは"This era will define the relationship between man and machine.(この時代に人間と機械の関係性が再定義されるであろう)"と言い、本イベントに登壇した同社Christoph Auer-Welsbachは、2020年までにAI市場は700億ドル規模に成長し、顧客とのやりとりの85%が人間を介さないものになるだろうと予測します。 またBI Intelligenceのデータはメッセージアプリの月間アクティブユーザー数が2015年にSNSアプリのユーザー数を逆転し伸び続けていることを示しています。

AIはユーザーの感情面のニーズを扱えるようになってきており、人間の特性である「思いやり」「直感」「創造性」「価値観」「一般常識」などと、機械の特性である「ディープラーニング」「発見性」「大規模数理」「事実確認」などを結合させることで世界を変えるようなAIシステムやソリューションを作り出すことができると話しています。

オンボーディングのUX

Slack社のAmir Shevatは多くのSlack Botが失敗する理由の一つとして、オンボード時のユーザー体験を指摘しています。
例えばSlackチームに新しいbotを投入する際、メンバー全員にダイレクトメッセージを送れば簡単に追加が済むだろうと考えるかもしれないが絶対にそのようなことはしてはいけないと言います。
それはチームに新しい同僚を一人追加する際、どのように彼をオンボーディングすべきかと同様に考える必要があるためです。
まずは最初にやりとりすべき適切な人と接点をもたせ、その後適切なチャネルに追加するなど、
botをSlackに追加された新しい仲間のように扱うことが大事だと言います。

また後半には"どのように私たちはプロダクトを体験しているか?"と疑問を投げかけ、カンバセーションデザインについても触れています。

ストーリーのUX

Wit.aiのMartin Raisonは、なぜ優れたUXがチャットボットに必要なのかと言うと、私たちはコンピューターに人間との会話を教えることはできるが、人間にコンピューターとの会話を教えることはできないからだと言います。
彼は完全な対話型AIは非常にハードルが高いものであるとした上で、フローチャート図を用いたワークフローを定義しストーリーを作ることでユーザー体験を設計する方法を説明しています。

まとめ

Slackの例はbotをまるで人間のように扱い、Wit.aiはbotをプログラミングされた機械として扱っています。あえて対照的なセッションを取り上げましたが、共通しているのはユーザー視点での体験設計が大事であり、カンバセーショナルな(対話型の)UX/UIが今後ますます重要視されてくるということです。

本カンファレンスのすべてのセッションはこちらで閲覧可能ですので是非ご視聴ください。
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