COVID-19の世界でのグローバルな調査

UXエバンジェリスト 金山

(この記事は、2020年3月17日に公開された記事「Global research in a COVID-19 world」の日本語訳です。UXallianceのパートナー企業として日本語版をお届けしています。翻訳の正確性は保証いたしかねますので、必要に応じ原文を参照ください。)

旅行禁止令が施行され、社会的距離を取ることが日常的になったとき、調査コミュニティー全体で警報が鳴り始めました。リサーチャーの活動は、個人的なやり取りとコミュニケーションが中心です。ユーザーと直接会えなくなると、どうなるのでしょうか。

Keep Calm and Carry on Researching

UXallianceは、グローバルな調査を協力して行うネットワークです。常に経験を共有し、COVID-19の世界的な広がりに対応して互いに学んできました。この記事は、グローバルな調査に役立ついくつかのヒントをまとめました:

ヒント1:調査の延期・続行を熟考する

(調査が進まなくても)製品開発は進める必要があります。そうしないと、計画されていた利益が得られません(コスト高な製品開発チームを遊ばせることになります)。選択できるオプションは次のとおりです。

  • 調査を遅らせ、COVID-19が去るのを待つ。ただし、数カ月かかる可能性があるので注意する
  • ユーザーの調査なしで先に進み、COVID-19が落ち着いてきたら製品を出せるように準備を行う
  • 調査を続ける。ただし、計画の微調整や変更が必要

ヒント2:現地のUX調査会社を利用する

幸いなことに、UXリサーチがグローバルになり、現地入りできないクライアントを支援できる強力な調査会社が存在します。多くは国際的なクライアントのためにリモートで作業することに慣れています。実際、これはUXallianceで私たちがしていることの中核です。調査会社は、社内の調査チームの目、耳、手となり、調査現場でローカライズ、セッションのストリーミング、映像・音声のグローバルな共有を行うことができます。COVID-19の影響は国により異なりますが、現地の調査会社はローカルで対応可能なことを知っています(例えば、帯域幅が十分でない場合など、必要な回避策も理解しています)。

ヒント3:参加者とリサーチャーを保護し、安心させるための安全対策を実施する

COVID-19は良好な衛生状態に関連があり、安全性と衛生面での対策が防護と安心をもたらします。これらは、地域のCOVID-19ステータスに応じて程度が異なります。

世界保健機関(WHO)は詳細なガイドラインを公開しています。

参加者のリクルーティングに関しては、ウイルスに感染した可能性のあるリスクの高いグループの参加者を排除するために、スクリーナーを調整することをおすすめします。また、不参加や自宅隔離が発生した場合に備えて、時間的な余裕を持たせてください。

参加者の安全のために、セッション間で触れた機器などの表面を消毒し、WHOの適切な衛生習慣に従い、セッション中のモデレーターと参加者の間の社会的距離を維持するために、特別な努力を行ってください。

対面式のセッションを実行する際の実践的な予防策の例対面式のセッションを実行する際の実践的な予防策の例

ヒント4:調査方法を調整する

最も感染が広がっている国でも調査が行われています。回避策の選択は、調査の目的によって異なります。

没入型の調査は、今回のような災害に対して最も脆弱であると感じられます。外出できないとき、どうすれば実際に世界中の顧客体験に没頭できるでしょうか。日記調査と現地のUX調査チームとの「共同没入」ワークショップを組み合わせることは、優れた回避策です。ここでは、現地のチームが調査対象となる状況に没入し、それを記録して、報告会でより深い洞察を得ることができます。「外国人」はワークショップに影響を与えないように参加しませんが、ローカライズされた社会的行動を直接理解できるので、意外にうまくいくかもしれません。これを日記やユーザー作成のビデオと組み合わせると、よりユーザーの生活に近づくことができます。

フォーカスグループも脆弱です(密閉空間に人を集めるときではありません)。代わりに、リモートビデオハングアウトやフォーラム機能などのテクノロジーが役立ちます。Whimsical、Miro、Muralなどのコラボレーションツールを使用すると、参加者はデジタルスペースで作業することができます。2020年3月13日金曜日、ミラノを拠点とするAssist Digital社のイタリアチームは、いくつかのツールを使用して初めてのリモートフォーカスグループを実施しました。

コラボレーションツールは、フォーカスグループをリモートで実施するのに役立ちます(Miro)コラボレーションツールは、フォーカスグループをリモートで実施するのに役立ちます(Miro)

私たちはあらゆる種類の調査方法を検討し、微調整を行うことで意味のある結果を得る方法を見つけました。このような試行錯誤を繰り返し、改善し続けています。最適な組み合わせは調査のニーズによって異なります。実施方法についてアドバイスが欲しい場合はお気軽にお問い合わせください。

ヒント5:タイムゾーンの違いを計画する

国際調査のために現地入りできない場合は、タイムゾーンを意識して効果的に作業する必要があります。これは、UXallianceが長い間取り組んできたグローバルな調査で乗り越えるべき課題です。

打ち合わせの時間を持つことは、ブリーフィングとチームへの報告を行い、ピボットセッションを実行するためにとても重要です。これ以外にも、非同期的に発生する可能性のあるアクティビティに関するチェックリストを用意しています。グローバルテストに精通しているUXallianceの調査パートナーと協力することで、グローバルな調査をスムーズに実行できます。

ヒント6:技術制限の回避策を実施する

ビデオストリーミングと画面共有は多くのプラットフォームで利用可能であり、非常に効果的なツールです。これは世界の多くの地域では簡単ですが、帯域幅が限られている地域では問題になる可能性があります。

通常、リモート視聴の利用シナリオは3つあります。

ストリーミングに関する技術的な制限がない場合:最良のシナリオは、セッションをリアルタイムで観察し、オンラインチャットとメッセージボードを使用してローカルチームと共同作業をする場合です。これは多くの国、特に主要都市で可能です。

帯域幅が不安定な場合:ライブに近い視聴では、配信されるまで最大5〜10分の遅延が発生します。この遅延によってバッファが作成され、国の帯域幅に大きな変動がある場合でもスムーズに表示されます。現地のリサーチャーはこの遅延があることを知っており、リモートの観察者がリサーチャーとどのように協力すればよいか分かっています。セッションは通常、観察者がフィードバックし続けられるようにスケジューリングされます。

帯域幅が不十分な場合:帯域幅が制限されている場合、遅延ビデオアップロードを使用できます。この状況では、セッションのビデオがセッションの直後または数時間以内にアップロードされます。十分なブリーフィング、パイロット、定期的(例:半日ごと)な打ち合わせを行うことで、リモートの観察者をうまく関与させることができます。

1つはっきりしていることは、私たちは前例のない時代にいるということです。また、COVID-19は、グローバルな調査を行う際にいくつかのユニークな課題をもたらします。しかし、Rahm Emanuel氏(前シカゴ市長)が言ったように:「深刻な危機を無駄にしないでください。」そして、この新しい状況に適応して、それを最大限に活用しましょう。これまでは、これらの課題に対処するための優れたテクノロジーやグローバルなノウハウがなかっただけです。落ち着いて調査を続けましょう!