COVID-19の時代にリモートのオンラインフォーカスグループを実施する

UXエバンジェリスト 金山

(この記事は、2020年4月14日に公開された記事「Conducting remote online focus groups in times of COVID-19」の日本語訳です。UXallianceのパートナー企業として日本語版をお届けしています。翻訳の正確性は保証いたしかねますので、必要に応じ原文を参照ください。)

フォーカスグループは、グループのディスカッション、信条、意見に基づく定性的な調査方法であり、人々の発言と行動に焦点を当てています。これは、世間のトレンドとビジネスチャンスを発見するデータを収集する手早い調査手法です。通常のフォーカスグループでは、7〜9人の参加者をモデレーターがガイドするディスカッションに招き、セッションは約2時間続きます。

COVID-19は現在、社会的な距離を確保する必要があるため、通常のフォーカスグループの実行に影響を与えています。そこで、私たちはすべての参加者がビデオコールで参加し、モデレーターがディスカッションを主導するリモートフォーカスグループをおすすめします。

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リモートフォーカスグループはやりづらい面がありますが、しっかり調整すれば対面で実施する場合と比べても遜色ありません。リモートフォーカスグループを行う際のヒントをご紹介します。

1. より詳細に調整、検討、計画する

  • 各グループの参加人数を4〜5人に制限し、すべての参加者が発言し、関与し続け、モデレーターの負担を軽減するように工夫します。調査目的に沿った参加者を集めるのは難しい場合もありますが、調査日程を調整して計画した属性の参加者を確保しましょう。反面、フォーカスグループをリモートで実行すれば移動する必要がないため、全国から参加者を募集できるメリットもあります。
  • オンライン秘密保持契約書は、各参加者に事前送付して署名してもらうか、オンライン署名ツールを使用してオンラインで収集することができます。もしくは、セッションを開始する前に同意書を読み、各参加者に音声で同意してもらうように依頼して、その回答を記録します。モデレーター:「今ご説明した同意書の内容に同意いただけますか。」 参加者:「はい・いいえ」。
  • 謝礼は、銀行振込またはオンライン商品券(Amazonギフトカードなど)を使用して簡単に支払うことができます。Paypal送金は、国際的なフォーカスグループにとって便利な方法です。リクルーティング担当者が支払いを管理することもよくありますが、これには手数料がかかり、謝礼金を事前に渡しておく必要がある場合があります。
  • 対面グループでは2時間が一般的ですが、オンラインでは60〜90分に保ちます。厳密な規則はありませんが、2時間は集中力を維持するのが少し難しいだけでなく、在宅勤務を邪魔する恐れもあります。

2. 適切なオンラインプラットフォームとツールを見つける

ビデオ会議ツール

選択するツールは、参加者との顔を見ながらの対話、ビデオ録画、ストリーミングができるものを選ぶ必要があります。参加者がリンクをクリックするだけでセッションにアクセスでき、ソフトウェアをインストールする必要がないのが理想です。市販のツールで利用できるものがいくつもあります。Zoom、GoToMeeting、Teams、WebEx、Hangoutsはメジャーなツールの例です。

GoToMeetingを使ったリモートでフォーカスグループを実施している例 GoToMeetingを使ったリモートでフォーカスグループを実施している例

グループをサブグループまたはプライベートスペースに分割すると便利な場合があります。これは、多くのビデオ会議ツールに共通の機能ですが、慎重な管理が必要です。例えば、メインセッションへ戻るのに苦労している参加者がいる場合は、参加者に連絡をとれる電話番号を手元に置いておくとよいでしょう。

ヘルスケアに関連するフォーカスグループをモデレートする場合には、匿名性とプライバシーを維持するプライベートミーティングスペースを利用する方がよい場合があります。あるツールでは、参加者はアバターを使用してプライバシーを保護できますが、誰が何を言ったかを追跡するのは少し難しいかもしれません。(https://www.liebermanresearch.com/sensor/

コラボレーションツール

Whimsical、Miro、Muralなどのリモートフォーカスグループをサポートする興味深いコラボレーションツールがあります。これらのツールは、ビデオ会議ツールに代わるものではありませんが、セッション中に参加者と簡単な演習をするために使用できます。これらは、セッションで使用されるホワイトボードまたはフリップチャートの代わりに使用します。

コラボレーションツール(Miro)を使って演習を行っている例 コラボレーションツール(Miro)を使って演習を行っている例

演習の例としては、参加者が仮想的な付箋紙を使ってアイデアを書き留めたり、マトリックスまたはマップに付箋紙を配置してアイテムに優先順位を付けたり、セッション中に出てくるインスピレーションや解決策を視覚化してブレインストーミングする活動があります。モデレーターは、参加者にビジュアルワークスペースにアクセスするためのリンクを送信します。モデレーターが仮想ホワイトボードを使用しているときに同時に作業したり、単に観察したりできます(メモの作成、地図上での付箋紙の配置など)。

ツールは一般的にうまく機能し、セッションをアクティブにできますが、演習の準備にとても時間がかかります。セッション中にサブグループの演習が行われている場合、観察してアドバイスするアシスタントも必要です。

調査ツール

コラボレーションツールの他に、オンラインアンケート(Surveymonkey、Googleフォームなど)を使って参加者に質問に回答してもらい、ディスカッションの入力としてリアルタイムで結果をグループに共有することもできます。もしくは、オンライン投票ツール(Pollev、Mentimeterなど)を使用して、重要な箇所に参加者の注意を引き付けます。

投票は、セッションのニーズに応じて、さまざまな方法で使用できます。これらはコラボレーションツールと一緒に使用して、ユーザーの関心を維持し、議論のための実際のデータを収集する仕組みとして使用できます。ただし、例えば、アイデアの概念に関するフィードバックを収集する際に質的データがより重要である場合など、個人の意見を重視することが必要な場合は、別のアプローチが可能です。今の例では、より多くのユーザー(20人以上)が関与し、データは主に投票、アンケート、およびオンラインディスカッションから取得されます。

3. ディスカッションガイドを調整する

  • ディスカッションガイドはオンライン用に作成する必要があります。セッションを予定した時間内に収めるために、ディスカッションガイドを3つまたは5つの主要トピックに絞り込みます。
  • セッションでの実施内容の説明や参加者がセッションに慣れるために十分な時間をとり、グループ内の人間関係を整えるようにします。
  • 情報または調査対象をどのように共有するかを慎重に検討してください。質問への回答を書き留められるようにメモ帳を用意してもらうか、画面を共有するか、画面を共有してもらうか、オンラインコラボレーションツールを使用するか、セッションの前に調査対象を共有するか、話し合いだけで目標を達成できるか、などを検討します。事前に決定し、新しいテクノロジーに慣れ、セッション前に必要に応じてクライアントに伝達しておいてください。

4. モデレーターと記録係を計画する

グループをモデレートする今までのスキルは使えるので、熟練したモデレーターを確保してください。それ以外に、モデレーターは技術的な課題を乗り越える必要があります。参加者に問題が発生した場合など、モデレーターの声が聞こえない場合に備えて、モデレーターはテクノロジーに精通している必要があります。

モデレーターがグループに集中してモニターから目を離さないようにするために、記録係を用意してください。常にセッションの様子を見ていないと、議論を理解するのが難しくなります。

5. 国際フォーカスグループ

同時通訳をセッションに組み込みます。通訳者は、モデレーターと参加者の言葉をリアルタイムかつオンラインで翻訳します。通訳者が通訳を開始する前にわずかな遅延が発生する可能性があります。通訳がオンラインである場合もあり、帯域幅によっては、ラップトップまたはデスクトップコンピューターによる同時通訳プラットフォームを使うことによる、わずかな遅延(数秒)が発生する可能性があります。一部の通訳者は、リアルタイムのリモートライブ通訳に慣れていないので、高品質のヘッドセットとマイクを用意したり、ビデオ会議ソフトウェアに精通してもらう必要があります。

www.interprenet.netなどのリモート同時通訳(RSI)は非常に効率的で、多くの言語でサービスを提供します。これらのタイプのツールは、国際的なユーザビリティテストを実行する場合にも非常に役立ちます。

6. グループインタビューの前に参加者の環境を動作確認する

セッションの前にテスト用リンクを送信して、選択したプラットフォームを参加者が使用できることを確認します。一部のプラットフォームはテストリンクが提供されています。もしくは、グループごとに異なるリンクを使用して、混乱を減らすために、調査用と同じ会議IDを使用してリンクをテストできるようにします。

参加者は、プラットフォームと参加するデバイスにより、実際に参加する場所でテストして、プラグインのダウンロードができないセキュリティの問題などがないことを確認する必要があります。この事前テストは、トラブルシューティングが必要な場合に備えて、セッション時間のかなり前に行う必要があります。リクルーティング担当者がこの作業を行えるかどうか検討してください。

7. グループディスカッションを実施する

グループセッションを実施するためのいつものスキルが使えますが、以下も検討してみてください。

  • セッションの10~15分前にサインインするよう参加者に依頼して、各参加者とチャットしてカメラやマイクなどがすべて機能することを確認する時間を確保します。
  • 参加者のプロフィールを記載した参加者ごとのカードを準備します。これは、適切な質問をするのに役立ちます。
  • プロフィールカードを画面上のレイアウトと合わせて並べておくと分かりやすくなります。(話し手が拡大表示される機能があれば、誰が話しているか分かりやすくなります)。
  • セッションの最後にセッションへの参加で問題がなかったか確認し、必要に応じて参加者と「オフライン」で個別に話して問題を把握しておきます。

8. リモートの利害関係者を管理する

国際的なプロジェクトに取り組むとき、時差のため、クライアントは特定のセッションしか見ることができないかもしれませんので、いつもより詳細なデブリーフィングを心掛けましょう。

ストリーミングしているセッションはライブで視聴されています。録画されたファイルは通常、セッションの1時間程度後にダウンロードでき、ストリーミングされたものより表示品質が高くなるのが普通です。

明確化のための質問をリアルタイムで行いたいライブオブザーバーがいる場合は、SlackやWhatsAppなどのプラットフォーム外のチャネルを選択して、そこに質問を残せるようにします。参加者がディスカッションしている間に質問を蓄積して、後から質問をすることができます。多くの場合、ディスカッションの終わりに質問する時間をとります。

9. データを収集する

ほとんどの場合、これは対面で実施する場合と同じです。セッション中に紙を集めるのではなく、オンラインコラボレーションツールを使用してセッション中に入力を収集することができます。

10. 結果の報告と提示

国際的なプロジェクトに取り組んでいるときの時差を除けば、他のレポートと違いはありません。

落ち着いて、フォーカスグループを実行し続けてください!

準備が整っていれば、リモートフォーカスグループを実施することは難しくなく、よい結果を得られるでしょう。オンラインでフォーカスグループを行うテクニックは今や世界中でますます採用されているので、まだ試していない場合は、ぜひ試してみましょう。