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ブランドデザイン!(Webリニューアルの出発点)

2005年12月9日

マーケティング・エンジニア
棚橋 弘季

日ごろ、いろいろなお客様からWebサイトのリニューアル構築のお話をいただきますが、そのご要望にはさまざまなものが含まれます。ユーザビリティの改善、SEO対策、ビジュアルデザインの変更、コンテンツ更新作業の簡略化、問い合わせ数や資料請求数などユーザーアクション数の向上、等々。Webリニューアルにこうした面での改善を期待されるのは当然のことだと思います。しかし、一方で、本当にWebリニューアルに期待することはそれだけでしょうか?と不安に感じたりもします。不安に感じるのは、そこに企業らしさの表現というご要望が明確に示されていない場合なのかもしれません。
今回は、ブランドデザインをキーワードとして、Webリニューアルの出発点を考えてみたいと思います。

Webサイトは企業を映し出す鏡

これまでも何度か書いてきましたが、Webサイトは企業を映し出す鏡です。顧客、株主、投資家、採用希望者、従業員、パートナー企業など、その企業にとってのステークホルダー(利害関係者)に対して、自分たちが何者で、過去に何をしてきて、これから何処に行こうとしているのかを知ってもらうための重要な接点です。
ある人はWebサイトを見て「この会社と取引してみたい」と思うかもしれませんし、別の人は「この会社で働いてみたい」と感じるかもしれません。その一方で、Webサイトを見て「やっぱりこの会社の商品を買うのはやめよう」だとか「この会社ではあんまり働きたくないな」と感じてしまうこともあるかもしれません。
つまり、Webサイト次第では、ステークホルダーと企業の間の関係性が大きく異なってしまう可能性があるということです。

誰があなたを気にしているか?(あなたは気にしているか?)

企業のもつ魅力をいかにユーザーに感じてもらえるかは、間違いなく企業サイトにとって重要なミッションの1つでしょう。
ブランディングについて扱うビジネス書では、「あなたは何者か」「どこへ行こうとしているのか」「他との圧倒的な違いは何か、また、どうやってそれを生み出しているか」といった問いをまず自身のブランドに投げかけることを奨められますが、Webサイトのリニューアルを考える際も、出発点は同じなのではないかと思います。

先にWebサイトを見た人が商品の購入や求人への応募をやめてしまうなど、Webサイトが企業にとってマイナスに働くケースがあることを考えましたが、それよりももっと頻繁に起きているはずで、しかも企業にとって一番恐ろしいのは、Webサイトを訪れたユーザーがそこで何も感じないことです。ダメだと感じるのはちょっとくらい期待があったからで、まだ救いがあります。しかし、何も感じなかったというのは、その期待さえも持ってもらえなかったということです。これは救いがありません。誰にも気にしてもらえないなんて。
ユーザーが気にかけたくなる企業の魅力が、Webサイトで表現できているか?
皆さんはそのことをどれだけ気にしていらっしゃるでしょうか?

圧倒的な違いを生み出すブランド

もちろん、ユーザーに魅力を感じてもらえるかどうかは、Webサイトの表現の問題ばかりではなく、企業そのものの抱える問題である場合もあるでしょう。しかし、企業自体がまだ自社の独自性を完全には実現できていなくても、企業の鏡であるWebサイトで自社が何を目指しているかを宣言し、かつ自社がそれを実現させていく過程そのものを、事実を綴ったエピソードとして表現し続けることで、その継続的なコミュニケーションそのものが企業のブランドを築く力になるはずです。ブランディングがINGで語られるのも、人間がそうした企業の実際の活動にこそ、その企業のブランド価値を見出すからに他ならないでしょう。

だからこそ、企業の独自性、魅力を表現するWebサイトのリニューアルを考える際には、自分たちが何者であり、どこへ向かおうとしていて、他との圧倒的な違いをどう生み出すのかといった「あるべき姿」をきちんと捉えることが重要なのです。現状はともかく、ここで描く「あるべき姿」が中途半端な独自性しか持たないようではいけません。圧倒的な違いを感じさせなければ、ユーザーが気にせずにはいられない魅力的なブランドの地位を得ることはむずかしいでしょう。
ユニークでないなら、何故、わざわざ気にするのでしょう?

「あるべき姿」−「現状」=「Webサイトの課題」

目標とする「あるべき姿」と「現状」のギャップを測ることがリニューアルに向けての出発点となります。なぜなら、そのギャップを埋めることこそが企業経営的視点で見たWebサイトの課題なのですから。また、この出発点をはじめに共有していくことが、Webサイトのリニューアル・プロジェクトを成功させる上での重要なポイントです。
あるべき姿と現状のギャップが明確になれば、あとは具体的にどんな戦略で、どんなツール・手法を用いて埋めていくかを考える段階です。最初にあげたユーザビリティの改善やSEO対策について考えるのはこの段階になってからです。また、リニューアルに際して必要な機能やコンテンツについて検討することも、あるべき姿と現状のギャップが明確になって、はじめて可能になります。はじめに自分たちが何を目指しているのかを共有していれば、何を行うべきか、いつ行うべきかを大きく捉え間違えることはないはずです。

宣言、そして、エピソードを語り継ぐこと

どこを目指せばいいかは明確になりました。ようやくここまで来て、Webサイトによる具体的なブランドデザインの作業が開始となります。Webサイトは企業を映し出す鏡です。鏡に映るブランドの魅力をいかに具体的に描き出すことができるかが、Webリニューアルの成否を左右します。情報設計もビジュアルデザインも、コンテンツの企画や機能設計も、すべて一貫して、ブランドを具体的な像として浮かび上がらせるための手段です。
また、ブランディングとは、顧客をはじめとするすべてのステークホルダー、ブランドが関わろうとするすべての社会に対する宣言から始まります。そして、その宣言で示した約束をいかに実現しているかのエピソードを語り継ぐ活動こそがブランディングです。リニューアル設計時には、この宣言に応じてさまざまなエピソード(利用者の声!活動レポート!新商品の発売!等々)が随時追加していけるよう、また、リニューアル後に、ブランドの魅力を伝える新たなコンテンツの追加も可能なよう、拡張性も考慮して設計を行うことも大事なポイントでしょう。

最後にもう一度。Webサイトは企業を映し出す鏡です。その鏡は、企業がどれだけの情熱をもって企業活動を行っているかも映し出すでしょう。
Webリニューアルは、その鏡を磨く作業です。鏡は情熱をもって磨けば磨くほど、その企業の魅力を美しく映し出すのではないかと思います。