2008年6月27日 競合トラフィックデータ分析の現在

WI本部データアナリシスユニット
西川 季宏

Googleのトラフィック統計提供サービスのリリース

どうも自分にコラムの順番が回ってくると、Googleで注目のサービスがリリースされるという傾向があるようです。以前、自分がアクセス解析に関するコラムを書く直前にGoogle アナリティクスがリリースされたということがありましたが、今度はGoogleのトラフィック統計提供サービスがリリースされたというニュースが飛び込んできました。

これは非常に興味深い機能で、弊社サイトドメイン(mitsue.co.jp)を入力すると以下のように、そのドメインのアクセス状況の推移や、ほかによく利用されるサイト、そのサイトへの流入時によく利用されるGoogleでの検索キーワードなどが表示されます。

ただ残念ながら、Alexaなどと同様、リリース直後から多方面で、このデータ取得方法の信頼性に関しての批判もあるようです。特に、日本ではYahoo! Japanの検索ニーズが高いということもあって、Googleからのデータが大きな影響を与えるこの機能では、日本のサイトの正確なトラフィック統計算出はなかなか難しそうだという主張は、そのとおりではないかと思います。

無料競合トラフィックデータの用途と限界

私も、Alexaも含めて、こういったデータはかなりバイアスがかかっていると判断しています。よくBlogなどで「Alexaで最近こんなデータが出ている。これは、○○な傾向を意味するのではないか」といった主張のある記事を目にしますが、そもそもデータの信頼性が無い以上、地に足の着いていない議論だと感じます。

私は、これらのデータは、何かの根拠として用いるのではなく、真に知りたいデータ、調査すべきデータがどこにあるか、「探りを入れる」または「考えるきっかけをつくる」ために用いられるべきだと思います。これからGoogleTrendsを使った分析の一例を示しますが、後述するようにこれらはすべて「探り」としてのデータです。誤解のないよう、重ねて書き示します。

食品・調味料大手のA社という企業があります。食品関連の企業では、自社製品の紹介もあわせた役割をもつレシピ集コンテンツを自社サイト内に作成することが多いのですが、この企業のレシピ集は特に有名ではないかと思います。GoogleTrendsでこのサイトのトラフィックを調べると、クックパッドのようなユーザー参加型のサイトには遠く及ばないものの、一定のアクセスがあります。

その中でキーワードを見ると「(食材名) レシピ」というものも見受けられます。クックパッドのようなサイトでは、サイト名のほかに、こうしたロングテールのキーワードを検索エンジンから拾っていることがアクセス数確保の要因と考えられますが、Aのようなサイトでも確かにこういったキーワードからの流入は存在するようです。

しかし、実際にこのキーワードをGoogleで検索してみると、実は検索順位で10位内には表示されません。そして、1位のクックパッドに次いで表示されたのは、同じく食品業界大手のB社のサイトでした。そして、このB社のサイトのトラフィックを同様にGoogleTrendsで調べると、ほぼすべての期間でA社のトラフィックを下回ったものの徐々に差が詰まっています。また、キーワードの表示に大きな差が見られました。それは、A社に比べて、B社の方が圧倒的に「(食材名) レシピ」というキーワードが多かったことです。

なぜそのような結果になったのでしょうか? この視点でA社、B社のサイト構造を比較すると、以下のように、「食材の紹介ページ」と「レシピ検索システム」の間に、「その食材のレシピ一覧ページ」が介在するかどうかという点に、構成上の大きな違いがありました。

そして、この構造の違いが、アクセス状況にこのような違いをもたらしたことが推測されます。レシピ検索システム配下の動的コンテンツは、いくら充実していても検索エンジンでは評価できません。そのため、それ以外のコンテンツが重要になってきます。特にB社の「食材のレシピ一覧ページ」は静的なページでかつ、キーワードとしてその食材の名前がページに多く利用されているため、検索エンジンの評価が非常に上がっていたということが考えられます。

以上をまとめると、A社サイトのレシピ集コンテンツについて、以下の傾向があるといえます。

  • 社名やレシピ集そのものの知名度が圧倒的に高いため、全体としてはB社を上回るトラフィックを確保している
  • しかし食材名を含むキーワードでの検索エンジンからの流入はB社に圧倒されており、トラフィックでは追い上げられている

しかし前述したように、このデータの出所自体が信頼に足る、とはいえません。信頼できないデータだけで、この結論をもとにサイトの方向性を決めるというのは、あまりに無謀なやり方です。それに、レシピ集コンテンツがそのサイトのアクセスの大半を占めなければ上記の結論は意味を成しません。いずれにしても、あくまでこれらのようなデータは、自社および競合を含む外部環境の変化について考える一助にすぎません。

インターネット視聴率データを用いた競合分析

そこで、より信頼できるデータとして登場するのが、ネットレイティングス株式会社の提供するインターネット視聴率データです。もちろんインターネット視聴率にもさまざまな制約はありますが、特に大規模なトラフィックがあって、統計的推定が可能であれば、信頼性のあるさまざまなデータの取得が可能です。上記の例でいえば、

  • 本当に検索エンジンからの流入が多いのか?
  • 本当にレシピ集がサイトの中での人気コンテンツなのか?

といったことが実証されるだけでなく、

  • どういった属性(男女別、年齢など)の訪問者が多くアクセスしているのか?
  • どのくらいの頻度でサイトを利用しているのか?

といったことまで明らかになるのです。

弊社では今般、TrendDoctorという新しいサービスをリリースしました。このサービスでは、インターネット視聴率を用いて、自社と競合など、外部サイトのアクセス状況から自社サイトの現状を明らかにし、今後のサイト戦略の指針を提供しようというサービスです。未開拓の領域も多い分野ですが、こうしたサービスの充実により、さらにお客様のサイトの改善、革新につながるお手伝いができればと考えています。

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