2008年7月11日 CSR報告書をアクセシブルにするメリット

取締役 兼 CSR推進室室長
山下 徹治

このコラムを執筆しているまさに今、洞爺湖G8サミットが開催されています。今回のサミットでは、地球温暖化問題への対応が特に注目を集めています。昨年の独ハイリゲンダム・サミットでは環境問題に対するアメリカの譲歩を引き出すことができましたが、洞爺湖サミットではそこからさらに前進があったのか、なかったのか。このコラムが掲載されるころにはサミットは閉会し、日本がホスト国としてメッセージを出しているはずです。地球温暖化防止に向けた世界的な動きがどのように方向付けられるのか、CSRに携わる者として非常に注目しています。また、当社の「エチオピア5年プロジェクト」を通じてアフリカが身近な存在となり、ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて発信されるメッセージも無関心ではいられません。

さて、そうしたグローバルな持続可能性の視点はさておき、日々のCSR活動は地道にコツコツと推進しています。そして先月6月30日に、当社のCSRサイトのリニューアルが完了し無事公開されました。まさに1年間の地道な活動結果を紹介していますので、ぜひ詳細をCSRサイトでご覧ください。

CSR報告書はアクセシブルであるべきか

実は、今回のCSRサイトリニューアルの裏ミッションとして、WCAG2.0勧告候補のレベルAに準拠させ、検証の結果をW3Cにフィードバックするというテーマがありました。

最初に社内のアクセシビリティチームからCSRサイトを上記の勧告に準拠させたいという相談を受けたとき、二つ返事で了解しました。CSRサイトの性質からアクセシビリティに対応するということは望ましいことは間違いないからです。しかし、作業を進めていくうちにCSRサイトのアクセシビリティ対応は「望ましい」どころか「すべき」という印象に変わっていきました。

可視化の工夫がかえってあだに

CSR報告書についてのイメージ調査をすると、たいてい「難しい」「わかりにくい」という評価が上位に来ます。報告書を書く側も、こういう評価をなんとかして払拭したいと工夫し、一目見てわかるようにグラフや図を駆使して説明しようと努力してきました。

しかし、私は今回のアクセシビリティ対応の作業を通じて、わかりやすくするためのこうした工夫があだとなっている可能性があると思いました。

グラフや図はあくまでも補足説明のためのもの

CSRサイト上の組織体制図を例にとって説明します。一般的な説明ですと、「当社では以下のようなCSR推進体制を構築し、……」と記述し、組織図の画像がポンと掲載されています。組織図の代替テキスト(alt属性値)はそのまま「組織図」となっています。これでは視覚障害者にはどのような組織図なのかさっぱりわからないのは言うまでもありません。しかし、健常者にとってもどうでしょうか、わかりやすいといえるでしょうか。組織図は、どのボックスから線が出ているか、どの部門と並列関係にあるのかなど、実はそれぞれきちんと意味を持って書かれているはずです。その説明を抜きにして組織図だけを見せて読者に理解を求めるのは果たして正しいといえるのでしょうか。

アクセシビリティに対応した場合、組織図がない状態でも本文の内容で組織図の概要が把握できるような記述を書き加えていきます。または画像に代替テキストを入れて補足します。そうすることで、組織図が補足資料としての意味が際だち、理解が促進されるようになります。

CSR報告書のアクセシビリティ対応は全読者のメリット

組織図を例に挙げましたが、グラフや図はCSR報告書ではたくさん使われています。これらの図を隠して本文だけ読むと、いかに報告書が図に頼っているかがわかります。これらを一つひとつチェックしてもらいながら修正作業をしていきましたが、最終的にはCSR報告書全体がわかりやすくなりました。いままで図やグラフで説明しきろうとしていたのは間違ったアプローチだったと反省しました。よかれと思ってやっていたことが、実は逆効果だったというありがちな落とし穴ですが、なかなか自分たちでは気づかないものであります。

そういう意味では、アクセシビリティの専門家とチームを組んで今回のリニューアル作業ができたことは幸運でした。アクセシビリティ対応にするというのは、決してこうした修正だけではなく、もっと広範囲にわたるチェック項目がありますが、この点を切り取ってみてもCSR報告書のアクセシビリティを改善することは、すべての読者にとってメリットがあることがわかりました。CSR報告書のわかりやすさの改善についてご興味のある方は、当社にぜひお問い合わせください。

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