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言語と文化の多様性

2018年12月7日

サウンドエンジニア
浦 裕幸

イタリアでは英語はあまり話されない?

先日、日本の芸人が電動スクーターに乗り、イタリアで旅をする番組を見ました。バッテリーが切れると、お店の人などにお願いをして、充電させてもらうという趣旨のようでした。途中、あるお店で充電をお願いしようと、「英語は話せますか?」と問いかけると、返事は「ノー!」。「英語はあまり得意じゃないわ!」と言うあたり、イタリア旅行に行ったことを思い出して妙に納得してしまいました。

確かにイタリアでは、思っていた以上に英語が通じませんでした。英語での表記も少なく、例えばオレンジジュースの売り場には、オレンジの絵は描いてありますが「Orange」という文字はどこにもなくて、「Arancia」の文字が大きく表記されています。他にもチーズは「Formaggio」、トマトは「Pomodoro」と表記されていて、馴染みの食材であっても、言葉が違うだけで一気に遠い存在に感じてしまいました(それがどこかで聞き覚えのある単語だとしても…)。

言語の数だけある文化や価値観

考えてみると、イタリア語も日本語と同じように、(ほぼ)イタリアでしか話されていない言語です。「言葉が世界共通だったら楽なのに」と思ったことのある方もいるかもしれません。しかし言語について調べてみると、言葉は「コミュニケーションのためのツール」としてだけではなく、文化と密に結びついており、その文化の多様性は言語の多様性が支えてきたということがわかります。それぞれの価値観やアイデンティティ、様々な文化を認め合うことで、新たな視点に気が付けたり、豊かさが生まれたりするのではないでしょうか。

ことイタリアでは、食に関しての地域性、レシピの多様性、伝統とのつながりを重要視しているようで、それぞれに「違う」ということが、イタリア料理の価値を高めているのだと考えられているようです。そのためか、イタリアでは「食」に対する言語表現が非常に多様です。

あらゆるものがマニュアル化され、いつでもどこでも、同じものを同じ値段で提供するチェーン店と、それらとは真逆の価値であるイタリア料理が、同じ世界に存在しているというのも、また多様性でしょう。

気候や環境と言語の影響は大きく、例えば寒冷地に住む人たちの言語には雪を表す言葉が20種類(!)も存在していたり、海に近いところでは、魚や海に生息する生物、山に近いところでは、植物や土に関する言葉が多く、その土地の自然や味覚を楽しんだり、身を守る知恵があったりすることがわかります。

世界の言語をひとつにしてしまうと、言語の数だけあった文化や価値観が無くなってしまい、画一的な世界になってしまうことを意味します。

多言語収録の現場

多言語収録の現場では「ネイティブはこんな言い方しないよ!」「こっちの(言い方)の方が自然だよね」という問題がよく起こります。確かに文法は間違っていなくても、普段は使わないような言葉はあります。翻訳したら、その言葉(単語)自体が存在しないということも起こります。

同じ言葉でも、出身地によって微妙にアクセントが違うことは容易に想像ができると思いますが、中には、地理的には反対側の地域でも、意外とアクセントが似ていたりと、面白いことも起こります。

このような例は、ただ文章を読むだけであれば、あまり気にしなくても良いのですが、多くの訪日外国人の方々が利用する観光案内や、公共の場所でのアナウンス、新たにその言語を学ぼうとする人たちに向けての教材などでは、その点も考慮する必要があります。

需要が増え続けている多言語の収録ですが、現場では、収録前はもちろんのこと、収録中にも、何がベストなのかを話し合い、選択しながら、日々の収録を行っています。