2021年8月20日 ステークホルダー資本主義の時代における企業情報の発信(特別寄稿)

Senior Consultant and Director of Editorial, Bowen Craggs & Co
Jason Sumner

1970年代にアメリカの経済学者ミルトン・フリードマン氏が唱えた株主中心の企業観がかつてないほどに疑問視され、グローバル企業の外部とのコミュニケーション方法に直接影響を与えています。

株主中心の企業観に代わり、「ステークホルダー資本主義」という、株主だけでなく、すべてのステークホルダーのニーズを考慮するという思想が、投資家の間でも人気を高めています。

気候変動、ダイバーシティ、コロナ禍など、現代の様々な社会問題に対応するように、企業は、投資家、従業員、顧客、パートナー、ジャーナリスト、そして社会全体から企業活動の見直しを迫られています。そのため、企業の取締役、ブランディング、広報担当役員は、自社企業のWebサイトやSNSアカウント上での組織の発言に細心の注意を払うようになりました。

企業は、評判を高めるために積極的に広報活動をしているでしょうか?自社の評判リスクに対し、適切に防御しているでしょうか?

Explaining yourself in 2021: How to inform and persuade your stakeholders on corporate digital channels」は、Bowen Craggs & Co.がWebブランディングをしている企業について調査したレポートです。例えば、企業がどんな会社であるか、何をしているか、そして良き企業市民としての評判があるかを評価しています。

このレポートでは、企業ブランディングに関連する3つの指標を用いて、優れた企業にスポットライトを当てています。

  • 企業の社会的責任に対する評判の確立
    • WebサイトやSNSを利用して、環境や社会への取り組みを説明したり、論争に対処したり、視聴者が関心を持ち、理解できるような方法で企業の責任について伝えることがどの程度できているか。
  • 環境と社会に関する報告
    • 主張を証拠で裏付けているか。報告データは可視化されており、包括的で、GRI(Global Reporting Initiative)やTCFD(Task Force on Climate-Related Financial Disclosures)などの外部基準によって裏付けられているか。
  • 会社情報
    • 自社がどのような会社か、どのような事業を行っているのか、どのように組織されているのかなど、基本的な情報をどの程度紹介できているか。

オンライン評判管理 - ビッグテックも評価上位に

アメリカのテクノロジー企業は、顧客向けのデジタルチャネルには非常に注力していますが、企業のデジタルチャネルは慣例的に軽視されてきました。しかし、この状況は変わりつつあります。ビッグテックの3社アマゾン、アップル、グーグルは、Bowen Craggs & Co.のレポート内で最高16点満点中14点を獲得し、評判に関する評価指標の上位に浮上しています。最近リニューアルされた「About Amazon」サイト内の「Our Workplace」「Our Impact」「Our planet」などのページでは、よく議論される雇用創出、投資、多様性と包括性、納税などの関心度が高い社会問題に正面から向き合っていることを強調するデザインとなっています。アマゾンは、自社のSNSアカウントを非常に効果的に利用し、サステナビリティに貢献していることをアピールしています。

データと事例の提示を求める投資家

最近の企業のデジタルコミュニケーションにおける重要なトレンドは、投資家向けカテゴリーにESG(環境、社会、ガバナンス)に関するデータへのリンクを提供することです。スイスの製薬メーカーNovartis、アメリカの通信大手Verizon、イギリスの石油大手Shellなど、多くのグローバル企業は、ベスト・プラクティスを採用して、投資家向けに印象的なESGカテゴリーを設けています。

企業理念(パーパス)を明確に

大手グローバル企業は、デジタルチャネル上で自社の「パーパス」について詳しく紹介しています。しかし、企業の目的や価値観の説明は退屈なものになりがちです。Bowen Craggs & Co.の企業サイト向けユーザー調査の結果によると、これらのページには多くの訪問者が訪れています。それゆえに、時間と労力をかけて、フレッシュで魅力的なコンテンツや直感的なデザインにすることが大切なのです。

ありきたりな価値でも良い事例を付け加えると興味深いものになります。例えば、欧州の航空機メーカーAirbusは、6部構成のビデオシリーズで、社員が「顧客重視」、「誠実さ」、「敬意」などの会社の価値を巧みに紹介しています。

パーパスを目立たせるもう一つの方法は、組織として何をしているかを明確に、簡潔に、事実に基づいて説明することです。例えば、欧州中央銀行は中央銀行が何をしているかを正確に理解している人はほんどいないということを認識した上で、「About」ページで、訪問者に理解を促すと同時に、中央銀行を社会的な貢献者として位置づけるという稀な組み合わせを実現しています。

ステークホルダー資本主義のトレンド(流れ・傾向)にのって

グローバル企業や投資機関のトップにおいて、ステークホルダー資本主義を推進する動きがかつてないほど高まっています。このトレンドは、広報チームが効果的な対応をする良い機会となるでしょう。

より多くの企業が自社のサステナビリティと環境関連活動や社会貢献活動をオンラインで伝えようとする中、企業情報を特徴的で説得力のある魅力的なものにすることがこれまで以上に重要になってきています。

英文「How well are you ‘explaining yourself’ on digital channels? Your company’s reputation could depend on the answer (Special Contribution)