UXPA2025 Amsterdam参加報告
UXリサーチャー隅田UXPA※1により毎年開催される国際カンファレス「UXPA International 2025」が、2025年6月16日〜19日の4日間にわたりオランダ・アムステルダムで開催されました。当社から私、隅田が参加し、ワークショップやセミナーの受講とポスタープレゼンテーションを行いました。今回の記事では、そのカンファレンス参加の様子をレポートします。
ちなみに、本記事でご紹介している発表は、2025年11月27日に開催予定の「UXトレンドセミナー2025」でも詳しく解説する予定です。ご興味がある方はぜひご参加ください。
カンファレンスの概要
本カンファレンスは4日間にわたって開催され、15〜20カ国から多様なバックグラウンドを持つUXの専門家が集まり、合計約50のオーラル発表と20のポスター発表が行われました。 アムステルダムの街は色彩豊かで美しく、公共交通のデジタル化が非常に進んでいるところが印象的でした。そのような環境の中、約300〜400名の参加者が集まり、カンファレンスでの交流や街の文化に触れる貴重な4日間となりました。
今回特に多かったのが、AIに関する発表です。「AIの普及が急速に進む中で、UXデザイン・リサーチなどのUX関連業務において、どのようにAIと協業していけるか」という観点で、専門家による考察や、手法の紹介・事例の共有などが活発に行われていました。UXPAならではの現場に根ざした視点でまとめられた発表が多く、非常に共感でき、刺激になるラインナップでした。
その中からいくつかピックアップしてご紹介をします。
生成AIを活用した疑似的ペルソナの活用事例
こちらは、Datasite社でプロダクトデザインを行うMelissa Thompson氏によって「Creating Conversational Personas – Leveraging AI Bots to Enhance User Experience」というタイトルで発表されました。
仮説やデスクリサーチの内容に基づいて生成AIにユーザーデータをインプットし、疑似的な人格を付与し、そのAIとの対話から調査計画作成を行うなどの事例が紹介されていました。
生成AIに特定の人格を持たせて会話する使い方は、娯楽として流行してきているように感じます。AI疑似ペルソナはユーザーリサーチの完全な代わりになるわけではないと発表者からも触れられていましたが、調査前の準備のうえでは有効に使えるのではないかという点は私としても共感できる内容でした。
AIのおすすめに頼り切らず、人間である作り手がどのようふるまうべきか
こちらはHexagon Manufacturing Intelligence社のUXデザイナー・Joana Cerejo氏による「The Unfulfilled Promise of Anticipatory Design」というタイトルの発表でした。発表内では、AIの普及により、レコメンデーションや最適化の多くを、AIを使い自動化する流れが進んでいますが、実際のところその精度や文脈理解には限界があり、結果としてユーザー体験を損なってしまうケースも少なくない、という問題提起がまず行われました。そこから、この課題を前提としつつ、「AIに決めさせる」のではなく、作り手側がどのようにAIを活用・制御し、どこに注意するべきなのかという点が整理・紹介されていました。
「AIに何をしてもらうか」という議論が進むと同時に、必然的に「AIが前提となる環境で、人間側はどう振る舞うべきか」という視点はセットになってくると感じます。この発表はまさにその部分を掘り下げ、AIと協働する人間側の実践的な観点を提示していて、とても興味深い内容でした。
若い世代から本音を引き出すためのインタビュー手法
私隅田が本カンファレンスにて行った発表内容についても簡単にご紹介します。私は「Connecting With New Generations for Research Initiatives – A Case Study on the Obsessed Young Fans of Japan」というタイトルで、従来とは少し異なる形でのUXリサーチ手法についてのポスター発表を行いました。
リサーチャーとしてインタビューをする中で、Z世代やα世代など、デジタルコミュニケーションが当たり前の環境で育った世代は、言いづらいことや輪を乱しそうなことを上手に「加工」し、角が立たないように言い換えたりすることに長けていると感じます。そういった業務における気づきを発端として、彼らからどのように「本音」を取り出すのか、という観点で調査アプローチの実践を行い、その事例について共有をしました。
おわりに
以上、カンファレンスの発表に関するレポートでした。 引き続き、各国のUX活動の理解やリサーチャー同士の意見交換、そして我々自身の研究・カンファレンス発表を通して私たちの知見を高めていきたいと思っています。 こちらでピックアップした発表をはじめ、他の発表についても、11月27日に開催予定の「UXトレンドセミナー2025」にて詳しく解説します。また、私隅田の発表に関しては、後日ブログでも詳細な研究内容・結果について掲載予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
- ※1 UXPAとは、UXデザイン・UXリサーチなどUX領域全般の発展を目的とするグローバルネットワークです。世界30か国に支部を持ち、1991年の発足以来、国際カンファレンスの開催や学術誌 Journal of User Experience (JUX) の発行などを通して、各国の実務家・研究者による知見共有を行う団体です。
Newsletter
メールニュースでは、本サイトの更新情報や業界動向などをお伝えしています。ぜひご購読ください。