Webサイトを、企業の評判を守る要塞にする
貿易摩擦から文化的対立まで、2025年は企業にとって、かつてないほど複雑で多様なレピュテーションリスクが発生しています。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2025年5月20日に公開された記事「Make your corporate website a reputation fortress」の日本語訳です)

aboutamazon.comにある「私たちの見解」ページ
一方、顧客・投資家・求職者などのステークホルダーが、貴社に関する情報を得るために選択する手段は、生成AIの進化によって大きく変化しています。
こうした状況だからこそ企業Webサイトは、企業のリスクや評判を管理するツールとして、これまで以上に強力な存在となるでしょう。ただし、適切に活用されれば、の話です。
ここでは、適切なWebサイト活用を実現するための、5つのポイントを紹介します。
一貫性のない情報は発信しない
世論が二極化しやすい現代においては、社内の従業員にAと伝えたにもかかわらず、投資家など社外の関係者にはBと、違うことを話したくなる誘惑に駆られるかもしれません。しかし、これは企業の信頼を損なう大きな誤りです。
環境に関する方針、ダイバーシティ&インクルージョンに関する公約、人員削減に関する発表など、社内チャネルで発信する内容は、企業Webサイトやソーシャルメディアといった外部向けの発信と、常に一貫している必要があります。
アメリカの航空機大手Boeingは2024年10月、この点においてシンプルながらも効果的なアプローチを行いました。CEOが全社員に向けて出した、時に厳しい内容のメモを、そのまま対外的なプレスリリースとして公開したのです。
アメリカのファストフード大手McDonaldsも同様の対応をしています。2025年1月に従業員へ送った、ダイバーシティ&インクルージョンに関する方針の変更を知らせるメールを、そのまま企業Webサイト上に掲載しました。
専門用語は使わない
略語や専門用語、同業種だけに通じる業界用語は、企業コミュニケーションにおいて常に情報伝達の妨げになっていました。そして今、これらの用語は、これまで以上に悪影響を及ぼしています。その理由は主に2つあります。
1つは、ESGやDEIといった言葉が、政治的な文脈で利用される傾向にあり、そういった略語の使用が、不必要な敵意や反発を招く恐れがあるからです。
もう1つは、ChatGPTやGoogleのAI Overviewのような検索AIが、ユーザーからの質問に貴社のコンテンツを参照して回答を生成する際に、企業特有の言い回しが使われていると、その回答の精度が下がってしまうからです。結果として、貴社Webサイトの情報は、AI検索から参照されにくくなる可能性があります。
企業の情報発信では、誰にでも理解できる平易な言葉を使い、顧客や関係者が普段使っている言葉で語りかけましょう。この点において、世界有数のeコマース企業Amazonの「Our Positions (私たちの見解)」ページは、これまでに見てきた企業Webサイトの中で、最も優れた手本といえるでしょう。
全ての問題に対する見解を明らかにする
企業のWebサイトは、関連する全ての問題について、常に信頼できる情報源でなくてはなりません。それは、たとえ対応が難しい問題であっても、同様です。もし、正確な情報を発信しなければ、AI検索ツールだけではなく貴社について調べているユーザーも、貴社の管理が及ばない外部の情報源から答えを導き出してしまいます。
これを解消するためのシンプルな方法は、貴社に関連する全ての重要な問題についての見解を、AからZまで網羅的に説明するページを設けることです。例えば、イギリスの製薬大手gsk、スイスの飲食品大手Nestle、イギリスの日用品大手Unilever、世界有数のeコマース企業Amazonによるアプローチは、貴社の良い手本となるでしょう。
このアプローチを実践する際に最も重要なのは、積極的に議論されている話題や、それらに対する貴社の見解が変わるたびに、コンテンツを常に最新の状態に保つことです。
ストーリーで語る
従業員に、彼ら自身の言葉で「会社のリアルな日常」を語る場を与えましょう。
例えば、企業Webサイトに掲載する社員インタビューの動画や、Instagramで「社員の一日」を紹介する投稿(Salesforceの事例が参考になります)や、YouTubeで公開する短編ドキュメンタリーのような形式が考えられます。
この方法は、企業の環境活動やダイバーシティの公約などを伝える際に、非常に効果的です。同時に、企業の方針に関する不毛な議論を避けることにもつながります。
記事、インフォグラフィック、動画といったストーリーを含むコンテンツは、センシティブで論争を呼ぶ話題に対する自社の見解を、わかりやすく伝えるための非常に有効な手段です。この手法を使った具体的な成功事例は、Bowen Craggsのポッドキャスト「Cutting Through」のエピソードページで確認できます。
人間らしさを前面に出す
今の時代において、人々が共感するのは「企業」そのものではなく、「企業で働く人々」です。この傾向は、ますます強まっています。
もし、会社にとって重要な発表や方針変更がある場合は、その背景にある「ビジネス上の意義」について、ぜひCEO自身が動画に出演して説明するよう働きかけてください。そして、その動画を企業のWebサイトはもちろん、社内外のあらゆるチャネルで積極的に発信しましょう。
例えば、日用品大手Unileverは、今年3月に新CEOが就任してすぐに、グローバルWebサイトで新CEOのインタビュー動画を公開しました。