品質の追求(その3)アクセシビリティ標準対応

取締役 木達

その1その2と、二度にわたってWeb標準準拠への取り組みをご紹介した「品質の追求」シリーズ。3回目となる今回は、アクセシビリティを取り上げます。既に多くの方がご存じかと思いますが、WebアクセシビリティとはWebページにある情報や機能の利用しやすさ、その度合いのことです。

そもそも何のためにWeb標準に準拠するかといえば、アクセシビリティ品質を高めるという動機もあったわけで、当社制作物の当たり前品質にアクセシビリティを含めるのは、時間の問題でした。しかし、その道のりはWeb標準準拠と同じく、決して平坦なものではありませんでした。

私の記憶の限り、当社でアクセシビリティを専門的に扱い始めたのは、人間中心設計(HCD:Human Centered Design)を扱う部門でのことだったと思います。実際、旧アクセシビリティBlog(accessibility.mitsue.co.jp)を開設した2005年当時、その最初の記事「ユニバーサルデザインとWebアクセシビリティ」を執筆した岡田の所属は、HCDコンサルティングチームとなっています。

その後、専属スタッフの採用とともに名称に「アクセシビリティ」を冠した部署を立ち上げ、徐々にサービス内容の拡充やBlogなどを用いた情報発信、社内教育に取り組みました。しかし、社内でアクセシビリティを当たり前品質にするためのハードルは、依然として高いものがありました。

なぜなら、制作スタッフはもちろんディレクターを含め、お客様への対応に関わるスタッフ全員がアクセシビリティに対する一定の知識・理解を(職種ごとの違いはあれ)有する必要に加え、制作物のアクセシビリティ品質をしっかり担保できるワークフローを確立・維持する必要があったためです。そして、それら一連の施策にかかる費用をお客様からいただくことの是非を巡り、大いに葛藤した記憶があります。

オプションとして扱う、つまり見積書において付け外しの可能な項目として表現する限り、アクセシビリティはあってもなくても良い品質、ともすれば価格交渉の材料となってしまいます。しかし当然ながら、アクセシビリティはあらゆるWebコンテンツに必要不可欠である以上、そのようなオプション扱いをすべきではありません。

オプション扱いしない前提において、当たり前品質としてより優れたアクセシビリティを提供するとなれば、先述の施策を実行する必要から、制作物の値上げは不可避に思えました。いっぽう、お客様の側でのアクセシビリティへのニーズは当時さほど高くはなく、値上げがお客様の離反を招く可能性は高いものと映っていました。そういう板挟みにあって、アクセシビリティと品質管理、両部門のマネージャーと3人で文字通り夜を徹しての意見交換をした記憶もあります。

最終的には、制作物の値上げをすることなく、当たり前品質としてアクセシビリティを提供していこうとの判断に至り、2010年1月に発表したのがウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン (WCAG) 2.0への標準対応の開始についてです。標準対応の詳細についてはニュースリリースに譲りますが、対象を新規に構築するWebサイトに限定したことで、社内への影響も限定した形でスタートさせたのでした。

品質の追求(その4)標準対応の進化とアクセシビリティに関する多様な取組みに続きます。