2013年3月8日 CSUN2013参加報告

R&D本部 アクセシビリティ・エンジニア
黒澤 剛志

2月25日から3月1日まで、米国サンディエゴで開催された世界最大級のアクセシビリティの国際会議、The International Technology and Persons with Disabilities Conference(CSUN 2013)に参加してまいりました。このコラムではCSUNに参加して私が感じたことを報告します。

CSUNとは

The International Technology and Persons with Disabilities Conferenceは主催のCalifornia State University, Northridgeの略称からCSUNと呼ばれています。今年で28回目を迎え、3日間にわたるセッションの他にワークショップ、アクセシビリティに関する製品やサービスの展示などが行なわれています。

私は今回が初めてのCSUNでしたが、会場のManchester Grand Hyatt San Diegoは広くきれいで、CSUNに集中して参加することができました。また、参加者がセッション以外にもさまざまな場所で議論していたことが印象に残っています。

モバイル:タッチスクリーン、キーボード、音声

CSUNではモバイルのアクセシビリティに関するセッションも多くありました。モバイルのアクセシビリティも留意すべきことは基本的にこれまでと同じですが、今まで以上に特定のデバイスに依存しないことが重要になると感じました。

モバイルではタッチスクリーンによる操作が大きな成功を収めていますが、キーボードや支援技術を使っているユーザーもいます。私自身、CSUNの会場ではNexus 7にBluetoothキーボードを接続してセッションのメモをとっていました。またセッションの1つでは音声入力や音声出力を使ったインタラクションが現実のものになりつつあるという話もでていましたが、これも多くのかたが納得されることでしょう。

このような状況でタッチ操作だけに依存したコンテンツは利用できるユーザーを狭めてしまっていると言えると思います。反対にモバイルでは物理的なキーボードを持たないものが多く、キーボード入力だけに依存することも問題があるという話もありました。特定のデバイスに依存することの問題は以前から指摘されていましたが、モバイルを含めマルチデバイス対応が進む中でこの問題がより広く、強く認識されるようになってきたと感じました。

いくつかのセッションではデバイスに依存しないユーザーインターフェースを実現する技術としてIndie UIが取り上げられていました。Indie UIはユーザーの操作(例:タッチ操作や矢印キーの入力)を抽象化して意図(例:スクロール)をWebアプリケーションに伝えるための仕様で、W3Cが標準化を進めています。今年はまだ「今後の技術」として取り上げられていましたが、来年のCSUNでどのような議論がなされるのか今から楽しみです。

アクセシビリティへの取り組み方

アクセシビリティというと監査や検証レポートによって問題点を指摘されるだけといった印象を持たれているかたも中にはいらっしゃるかもしれません。しかしCSUNで参加したセッションで繰り返し取り上げられていたことは、アクセシビリティは単に問題を指摘することやガイドライン・法律に従うことだけではなく、より多くの人が使えるWebを作る取り組みだということです。監査や検証レポートもその中の1つのプロセスであり、ゴールではありません。

その中でアクセシビリティの専門家が気を付けるべきことは「問題を責める」のではなく「問題を説明する」ことという話がありました。「問題を説明する」とはアクセシビリティの問題によって誰がどう困り、どうすれば解決できるのか、そして問題の解決を確認する方法を伝えることです。あるセッションではWebサイトのリニューアルにおいて発注者側から受注者側に対してアクセシビリティの考え方と現状の問題を説明したという報告があり、素晴らしい取り組みだと感じました。

アクセシビリティの向上にはアクセシビリティの専門家だけではなく、関係者すべての取り組みが必要です。問題を指摘しているだけでは関係者のモチベーション維持は難しいですが、問題を解決すると捉えれば前向きに取り組める、という話も多くありました。さらに、より多くの人がアクセシビリティを積極的に取り組めるようにゲーミフィケーションに関するセッションも複数あったことが印象的でした。

CSUNを終えて

今回が初めてのCSUNということもありますが、CSUNを通して多くの参加者と知り合えたことが私にとって貴重な経験になったと感じています。CSUNはセッションの他にもレセプションやCSUN Tweetupといったイベントがあり、それらを通して参加者同士が知り合ったり交流を暖めあったりしていました。

今後はCSUNで学んだことや出会った人々とのつながりを活かしてこれまで以上に積極的に情報発信をしていきたいと思います。