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Amazon同士が対立することの悲しい皮肉

(この記事は、2019年8月23日に公開された記事「The tragic irony of Amazon vs. Amazon」の日本語訳です。)

ブラジルにあるテクノロジー企業が、Appalachia(訳注:アメリカ合衆国東部の地域を表す単語)という名前のオンラインストアをオープンしたとしましょう。そして、その appalachia.com が年月を経てグローバルに巨大化したため、同社がトップレベルドメイン .appalachia の独占的な所有を求めたとします。appalachia.com のみならず .appalachia をも所有するのは、多くのアメリカ人が故郷と呼ぶところのAppalachiaに対して、唯一の地主となるようなものです。

これはまさしくAmazonという企業と、同じアマゾンの名で知られる地域とのあいだで起きていることです。今年5月15日、ほとんど形式的な位置付けである30日間のコメント期間ののち、ICANNは .amazon ドメインの委任を、企業としてのAmazonに承認しました。これにより、ドメイン名の管理を巡って同社とアマゾン盆地にまたがる8ヵ国とのあいだで7年間にわたり続いた争いが終結したことになります。将来、同社のサイトにアクセスするのに amazon.com と入力する代わりに、単に amazon という単語を入力することになるかもしれません。

もちろん、国外の地域名を乗っ取るアメリカ企業の「世間体」というのは、理想的と呼べるものではありません。しかしAmazonはこれまでのところ、世間体を気にしていません。「環境保全」はおそらく、同社がもっと敏感になるべき概念なのですが。

世界的な消費主義勢力と極めて密接に関連している企業が、同じ勢力に脅かされている地域の名を乗っ取るとは、なんと悲しい皮肉でしょう。

世界自然保護基金によると、地球上の生物種の10分の1がアマゾンに生息しています。南アメリカの約40%がアマゾン盆地に属しており、そこには14億エーカーに及ぶ密林と、地球に残された熱帯林の半分が含まれています。科学者は長年、アマゾンと地球の健康状態に明確な相関があることに注目してきました。私たちの誰もが、生き残るのみならず繁栄するうえで必要とする地域から、完全に名前を切り離して考えるようになったとき、果たして私たちは次世代にどのようなメッセージを送ることになるのでしょう?

最近、抗議の宣言に署名したアンデス諸国(ペルー、コロンビア、ボリビア、エクアドル)の大統領達は、その点に強い関心を寄せています。彼らは「先住民の権利や、人類全体と地球温暖化にとって有意義なアマゾンの保護といった、国家レベルの公共政策の検討より民間ビジネスを優先するという、重大な先例をICANNは作った」と述べています(部分引用)。

Amazonはドメイン名に対する法的な権利を有しているかもしれませんが、もっと大きな権利を問われています。それは、自然環境に関する権利です。修復不可能なまでに消費され、商業化され尽くしていない世界に対する、次世代の権利です。商標権者の権利を尊重するのと同じように、ICANNは自然環境に関する権利を重んじ、いつでも内規を変更することができます。

理想的には、AmazonはPatagonia(※地域ではなく企業)をお手本とすべきだったと思います。Patagoniaがトップレベルドメインの .patagonia を所有しようとしたとき、やはり南米諸国からの反対を受けました。Amazonと異なり、Patagoniaは単に自らの要求を取り下げました。おそらく同社は、いくつかのドメイン名をそのままにしておいたほうが良いことに気づいたのでしょう。

.amazon ドメインを取得せんとするAmazonの判断は、ICANNの規則や規制に準じたものかもしれませんが、しかしビジネスよりも自然環境の保全を重んじる方向に動きつつある世界に対して、厄介なメッセージを送ることになります。

もしJeff Bezos氏が起業し直すなら、特定の地域と明確に関連づけられる社名は採用せず、もっと容易に商標登録できる名前を選んだことでしょう。しかしお金は権力をもたらし、そして権力は常識に勝るものなのかもしれません。地球にとって、企業としてのAmazonは地域としてのアマゾンほど重要ではありません。

Amazonのドメイン名が .com(および多くの国別コード)に限定されたとして、消費者が困ることはないでしょう。長年にわたり、私たちはAmazonのWebサイトにアクセスするための道筋を常に見出してきました。トップレベルドメインの所有は世界征服に向けた新たな一歩に過ぎないかもしれませんが、しかしその一歩は行き過ぎたものです。

当のBezos氏でさえ、いつの日かAmazonが失敗することを予見していると、公言してはばかりません。彼はかつて「Amazonは破産するだろう。大企業を見ればわかるけれど、その寿命は100年以上ではなく、30年やそこらの傾向がある」と発言しました。地域としてのアマゾンの未来が、Amazonの未来よりずっと明るいものであることを願います。

消費者の私たちには、何ができるでしょう? Bezos氏に向け、ドメイン名ばかりでなく地域の自然環境も保全する役割を担うよう、手紙を書くことができます。Amazonが件のトップレベルドメインを所有したとして、他社がそのドメインを取得しようとするのを未然に防ぐのみならず、そのドメインを実際の環境の保全活動に役立てることができるでしょう。

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