品質の追求(その7)表示パフォーマンスの「当たり前品質」化への取り組み

エグゼクティブ・フェロー 木達

私がかつて『マルチデバイス対応における「三本の矢」』というコラムを書いたのは、2014年3月のこと。その中で、Webサイトがマルチデバイスに対応するための3要件を、戦国武将・毛利元就にまつわる「三矢の教え」になぞらえて紹介しました。具体的には

  • アクセシビリティ
  • マルチスクリーン・デザイン
  • 高速な表示パフォーマンス

の3つがそれで、最初のアクセシビリティについてはこのシリーズ記事の(その3)アクセシビリティ標準対応(その4)標準対応の進化とアクセシビリティに関する多様な取り組みで、またマルチスクリーン・デザインについては(その5)レスポンシブWebデザイン(その6)レスポンシブWebデザインの検品で触れてきました。

最後に残された、つまり社内において最も後発となったのが、表示パフォーマンスという品質への取り組み。決してそれを軽視してきたつもりはないのですが、結果として後回しにせざるを得なかったのは、単にアクセシビリティとマルチスクリーン・デザインの優先度が高かっただけではなく、他にも理由があります。

第一に、表示パフォーマンスにはさまざまな要素が影響します。フロントエンドはもちろんのこと、バックエンドやネットワークも、表示パフォーマンスを大きく左右し得るのです。従い、未公開のコンテンツをお客様の環境で実際に公開するより前に社内で検品する必要上、どこまでどう割り切って評価すべきかは難しい問題でした。

第二に、表示パフォーマンスと一言で言っても、それを測るための指標は数多く存在します。どのタイミングで、何を、どのように測るか......またその計測結果につき、どの程度の数値なら検品に合格=必要十分な表示パフォーマンスを備えており、ゆえにお客様への納品が可能と認めるかは、非常に悩ましい問題です。

第三に、表示パフォーマンス指標の中には、計測を実行する環境のCPU性能やインターネットへの接続速度などが、計測結果に大きく影響するものがあります。従い、制作者が検品を依頼する前にセルフチェック(社内では「自己検品」と呼びます)を行った結果と、検品する側が計測した結果とが著しく乖離することのないよう、指標や測り方を選ばなくてはなりません。

もろもろ検討した結果、Google Chromeに付属するLighthouseの表示パフォーマンススコアを指標とし、またその計測については制作者や検品担当者のPCを使わず専用のシステムを構築、その上で実行することとしました。そして気がつけば、『Webコンテンツの「当たり前品質」に表示パフォーマンスを追加』を書くまで、記事冒頭に紹介したコラムからは5年以上の月日が経過していました。

品質の追求(その8)表示パフォーマンス計測の仕組み化に続きます。