HCD-Netフォーラム2018参加レポート(5) ~基調講演2『使われるプロダクト開発の秘訣』~

UXエバンジェリスト 金山

今回は、HCD-Netフォーラム2018の基調講演2『使われるプロダクト開発の秘訣』を取り上げます。

講師の及川 卓也(おいかわ たくや)氏は、フリーランス エンジニアリング・プロダクトアドバイザーとして、株式会社デンソーの技術顧問もなさっています。日本DEC社、マイクロソフト社、Google社と先端企業を渡り歩いた経歴からITの進歩の歴史を振り返られ、最先端の組織・プロセスに関してお話しいただきました。

ITの進歩の歴史

  • 1990年以前:ターミナルの時代

    ハードウェアは、汎用機からミニコンピューター(DEC VAX11など)に移っていった。キーボードとターミナルによるCUI(Character User Interface)が主流だった。「使える=機能がある」の時代だった。使いづらくて当たり前で、人がコンピューターに合わせていた。

  • 1990年代~:ダウンサイジングの時代(PC, Workstation, Apple社Mac)

    CUIがGUI(Graphical User Interface)に変わっていき、MotifやOpenlookなど、GUIの標準化が進められた。オブジェクト指向が用いられ、少し人間側に近づいてきており、Windows XP(Experience)のような名称にも表れている。Experienceや楽しいことが考えられ「使いたい」ものへと進化していった。

  • 1990年代後半から2000年代前半:クライアント・サーバーの時代

    オフィス環境へのコンピューターの進出が進み、業務で利用されるようになってきた。「使われない機能」が増えた。(ハード・ソフトの進歩に対して、利活用が進んでいないことが問題)

  • 2000年代後半~:Webの時代(Free, Less expensive ⇒ Monetize)

    システムの一括購入からサブスクリプションやアプリ内課金の考え方に変わってきて、「使われ続ける」ことが必要になってきた。開発と運用は別々に順次行っていたが、開発と運用は同時進行となり、リリースしてからが勝負となるDevOpsの時代になってきた。そうなると「使われ続ける工夫」が重要になってきた。

  • 現在:Ubiquitous, Pervasive

    人間をコンポーネントとして考え、APIを持たせて呼び出すような考え方も出てきた。シェアリングサービスも似たような考え方である。Uber社が自動運転化するまでの間、人を機械の代わりに使用していると捉えることもできる。「使っている感覚」の喪失が起きている。

最先端の組織・プロセス

上記の歴史を踏まえ、最先端の組織の在り方やプロセスについて紹介されました。

領域としては、ビジネス+エンジニアリング+デザインなどを同時に考えて進めていく必要が出てきており、ソフトウェアエンジニアが単独で開発する時代から、ソフトウェアエンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナーが協力して開発する時代になっている。プロセスとしては、Lean + Agile + DevOpsのような組み合わせで、隠れたニーズを発掘し、要求の変化にも柔軟に対応しながら開発・運用を進めるやり方が広まってきている。視点として、顧客+市場+競合を考えた取り組みが必要である。

まとめ

自分自身の社会人としての記憶をなぞる様なお話を「使い方」の切り口でたどることで、技術と人間の関わり合い方の変化を見直すことができました。基調講演1で感じた本来の目的と基調講演2の先端技術による実現方法をうまく組み合わせることで、よりよい社会を築いていけるのではないかと感じました。

次回は、3つ目の基調講演『日本人中心設計という思想』についてレポートする予定です。

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