HCD-Netフォーラム2018参加レポート(6) ~基調講演3『日本人中心設計という思想』~

UXエバンジェリスト 金山

今回は、HCD-Netフォーラム2018の基調講演3『日本人中心設計という思想』を取り上げます。

講師の竹田 茂(たけだ しげる)氏は、スタイル株式会社の代表取締役で、42歳~54歳を対象とした起業支援プロジェクト「42/54」(よんにいごおよん)のプロデューサーです。 今回の講演内容のアジェンダが『人間中心設計から日本人中心設計へ』として投稿されています。本記事では、基調講演3の中で筆者が気になった「日本人らしさ」に焦点を当ててご紹介いたします。

HCD(人間中心設計)の意味をあらためて考えるための基調講演3つ目は、「日本人中心設計」と、日本人を中心に据えた考え方を提唱されるものでした。講演の冒頭、竹田氏は、これからは「日本から(世界に)提案できる価値」が大事だと述べ、明治以前の日本らしいよいものとして、残心(剣道で一本決めた後、決められた相手に対する配慮)や無尽(みんなで集めたお金を全員に均等に配る仕組み)などが紹介されました。「おもてなし」とサービスとの違いについても、相手も自分も一緒に楽しむのが「おもてなし」であるとのことでした。どれも相手や仲間に対する思いやりに満ちており、日本人が本来持っている(よい)特性だと感じました。そのような素晴らしい心の在り方が日本人の価値と言えるのかもしれません。

では、そのような日本人のよさをどのように発揮していけばよいのでしょうか。竹田氏は、日本らしさとして「味覚」「聴覚」とそれらを表す「言葉」も重要な要素であると述べました。例えば、味覚を表現する日本語は、もちもち、まったりなど400を超えており、これほど多様な表現を持った言語は稀であるとのことです。食べ物の微妙な違いを感じ取り言葉として表すことができる感性こそ、確かに日本人の特筆すべき特性だと思います。

その他、他国と日本を比べた時の例として、人間の最高の価値を表す言葉としての「真・善・美」に対して、真はアメリカ、善はイギリス、美は日本と割り当て、日本人は感性を生かした「美」が特徴であると説明しました。論理的なことはAIに任せ、人間はより生理(感覚)的なことにフォーカスすべきで、感性に優れた日本人は、量より質で勝負していくべきだとの主張でした。

まとめ

全6回にわたってHCD-Netフォーラム2018をレポートしてきました。パネルディスカッションでは、HCD専門家について、資格・教育・ナレッジの共有の3つの視点で考えを整理することができました。3つの基調講演からは、ITの進歩の歴史から学んだり、不便益と言った違った視点から考え直したり、日本人としての生き方を考えたりすることができました。

年号も平成から新しい年号に変わろうとしていますが、人間にとっての益は何かを見失わず、時代の流れに合わせた技術を取り入れて、新しい時代に踏み出していきたいものです。

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